1960(昭和35年)/12/7公開 110分 モノクロ シネマスコープ 映倫番号:12005,12005-2
配給:東映 製作:東映
巨万の財宝と剣と意気地をかけて対決する天衣無縫の青年美剣士と稀代の怪盗・風魔地獄之助、勝気な桔梗姫、女賊お竜、海賊など多彩な登場人物で織る波乱万丈の痛快冒険時代劇。
【前篇】
屋敷勤め嫌さに旗本の家を捨てた天衣無縫の美剣士・疾風八郎太は、ある夜、肥後の国は熊本五十四万石・細川斉元の江戸上屋敷から飛び出してきた数名の怪漢の手から、斉元の妹・桔梗姫と桐箱に入った観音像を奪い返し、腰巾着のてん作少年の手を借りて、姫を娘軽業師・市村栄蝶の掛小屋に運び込む。座頭の栄蝶をはじめ、一座の女たちは、美男用心棒・八郎太にゾッコン惚れていただけに姫の姿を見て大騒ぎ。怪漢、実は豊臣の勇将・小西行長の末孫・小西六道斉一味が狙った観音像には、当時徳川の天下を覆すために行長が貯えた巨万の軍用金の在りかが秘められていた。翌日、姫と像は八郎太の手で細川家に届けられたが、同夜、鑑定家・蘭方斉と共に像は盗まれ、一味がたむろする異様な奇巌城に運び去られた。だがその像も一瞬にして左半面傷の怪盗・風魔地獄之助の手に渡った。蘭方斉こそ実は地獄之助だったのだ。正義のために立ち上がった八郎太は、地獄之助とその手下の濡れ髪お竜と闇の梟兵衛と対決するが、屋敷の生活に飽きて八郎太を追ってきた姫の短銃で難を逃れた。大切な像は細川家の発案で盗賊の眼をくらますため、四谷の持仏堂に隠されたが、またまた地獄之助一味に襲われる。一味と再び対決する八郎太も、彼らの銃口には勝てずに体の自由を奪われる。像の底を割って宝庫の秘密は奇巌城にあると知った地獄之助の前に、突然六道斉一味が立ちはだかり、舞台は更に奇巌城へと移る。馬で駆けつけた八郎太は、更に六道斉の手に渡った像と姫を求めて修羅迅速の大活躍。古城はたちまち血の海と化すが、地下室の扉の奥には更に今ひとつの観音像があるだけだ。
時に八郎太と細川家中の皆殺しを狙って梟兵衛が爆薬に点火した。「八郎太を殺さないで…」同時に叫んだのは姫とお竜だ。二人は共に八郎太が好きだったのである。
【後篇】
嫉妬に狂うお竜、絶叫する姫、八郎太が地獄之助に第二の観音像を手渡した途端、古城は爆音と白煙に包まれた。半死半生の梟兵衛と火柱の幹次を町奉行所の牢舎に引き立てて拷問の揚句、八郎太の名案で第二の像を握った地獄之助の行き先、行長の宝庫の鍵が肥前・筑後の不知火の海だと口を割らせる事が出来た。最後の勝利を得るべく八郎太は栄蝶一座にまぎれ込み九州に立つ。更に彼を追う巡礼姿の桔梗姫と腰元・静香、姫を追う家老・遠藤の早駕籠などが街道に入り乱れる。土地の漁師に不知火城の在りかを尋ねて廻る八郎太と奉行所与力の一行の留守中、栄蝶一座は地獄之助の配下の海賊団に襲われるものの八郎太が救い出す。姫もとうとう八郎太を探しあてることが出来た。八郎太に姫、家老・遠藤、栄蝶一座を乗せた船が、夜の海上で梟兵衛と幹次に襲撃されるものの八郎太の活躍で事なきを得る。そこへ役人と船頭に化け込んだ地獄之助一味が現れたのである。たちまち船上は乱闘と化し、姫と栄蝶らを奪われたまま八郎太は、海中に飛び込んで姿を消す。夜明け、地獄之助は第二の像から宝庫の地図を見出し、姫を小脇に不知火城にたどりつく。一方手下の海賊たちは浜辺で栄蝶らに悪ふざけを仕掛けるが、お竜のとっさの気転で、てん作たちは助け出される。そこへ八郎太が半裸体で太刀を背にして現れた。海賊たちを切り倒し、姫と地獄之助の後を追う八郎太の英姿が不知火城の地下洞穴に消えていく。後に続く濡れ髪お竜を狙う幹次の銃口、そのままお竜は八郎太の胸の中で絶命する。お竜が残した短銃を手に八郎太は一歩一歩地獄之助に迫っていく。その頭上に梟兵衛のくさり鎌の分銅が唸ったが一瞬早く八郎太の刃がそれを倒した。いよいよ善と悪との壮絶な対決…まばゆい巨宝の輝きに照らされ、果てしない死闘が続けられたが、八郎太の剛剣は遂に地獄之助の息の根を止めた。南海の海に眠っていた巨宝が世の人々に幸せをもたらす日も近いことであろう。