1961(昭和36年)/1/21公開 65分 モノクロ シネマスコープ 映倫番号:12099
配給:東映 製作:東映
沢村訥升の主演第一回作品。勝浦藩の若殿さまが家来と姿を入れ替えて、江戸に、房州に、国家老一味の抜荷買いの証拠を求めて大活躍を繰り広げる痛快作。
房州勝浦藩一万石の新領主となった若殿・稲葉桐太郎は、国家老・平山主膳の請いで、嫌々ながら国入りすることになった。この桐太郎、若殿の身でありながら、夜毎居酒屋に入り浸っては放埒三昧、留守居役の才賀孫兵衛を手こずらせているぐれ若殿である。酒びたりの上、馴染みの居酒屋の女たちを呼びよせて派手な道中を続ける桐太郎の行列の後を、二人の男女が影のようにつき従っている。男は桐太郎の危難を救った肌一面に入れ墨のある美男のぐれ浪人・柚木菊之丞、女は禁制のオランダ櫛を売買する妖艶なお幸だ。ヘンなことから意気投合した菊之丞が、お甲の仕事を手伝う約束で一緒に房州へ向かうことになったわけだ。国表では廻船問屋・房州屋、土地の貸元・久我の為五郎らと結託して、密貿易で私服を肥やしている平山主膳が、若殿・桐太郎の乱行ぶりにほくそ笑んでいた。為五郎は、お幸を使い、オランダ櫛を餌に江戸の娘たちを誘拐し、支那商人に売り渡す計画を進めていた。お幸は、菊之丞の男らしさに惹かれながら、勝気なだけに口には出せず、途中チンピラに襲われた房州屋の娘・お篠を救って親切にする菊之丞に激しく嫉妬する。菊之丞はお幸の口ききで、為五郎一家の用心棒となった。主膳は為五郎に命じ、城下の娘たちにまで毒牙を伸ばすと共に、暗愚な桐太郎を謀殺してお家乗っ取りを目論んだ。主膳一味に囲まれて危機一髪の若殿・桐太郎の前に、菊じらしの入れ墨も鮮やかな菊之丞が飛び出した。その見事な太刀さばきに主膳一味は倒され、誘拐された娘たちも救われた。菊之丞こそ主膳一味の悪事を暴かんが為の、真の若殿・桐太郎の偽りの姿だったのだ。暗雲去った勝浦藩、菊之丞に傷心のお幸を託した若殿・桐太郎の姿が馬上遥かに遠ざかっていく…。