1961(昭和36年)/3/8公開 74分 モノクロ シネマスコープ 映倫番号:12111
配給:東映 製作:東映
梅宮辰夫・三田佳子のコンビが放つ航空機による人命救助を使命とする救難航空隊の活躍を豪快なタッチで描く航空ドラマ。迫真のロケーションカメラは、果てしなき大空に、荒れ狂う海に、危険をはらんだ急峻に、縦横に駆使され、スリルとサスペンスを盛り上げて、ロケの魅力をふんだんに取り入れている。配役は、救難航空隊の若い行動的な青年隊員大村浩三に梅宮辰夫、航空隊に勤務する清純な娘村田洋子に三田佳子が、コンビ10本目の作品に主演する。
浜松航空基地-ここには、航空機による人命救助を使命とする救難航空隊が組織されている。荒れ狂う海に、濃霧たち込める危険な山岳に、捜索機は飛び、死を一歩前にした遭難者を救うため、ヘリコプターが出動する。
この基地に、ある日、大村浩三という青年が転属してきた。彼はジョンソンの飛行幹部で、飛行時間1000時間ヘリコプター500時間というキャリアの持主、機長の資格さえ持つ彼が何故こんな基地へやってきたのか?救難隊長水島は、この仕事は、甘っちょろいヒューマニズムでは為しとげられない事を指摘した。浩三が入隊して間もなく、この基地に、村田洋子という若く美しい娘が勤めることになった。彼女は船長だった父を海の遭難で失って以来、救難隊の仕事の尊さを知り、ここの食堂で働く決心をしたのだった。
浩三の底抜けの明るさと、そして粗野な言動が、たちまち隊内に拡っていった。遠慮のない彼の態度は、洋子をさえ反発させた。だが特に、門原二尉の浩三へ対する憎悪は烈しかった。門原は何事も勇気と規律のみで一切を処理する男だ。これに反して浩三は、この救難の仕事に、科学的な処理を主張した。二人はことごとく対立し始めた。落下傘降下訓練の際、夜間飛行の救難作業の際、安全を第一とする浩三の処置が臆病とみなされた。洋子は、浩三と出合えば口喧嘩をするものの、いつかその反発は、女らしい気づかいに変ってゆき、浩三の悪評判に心を痛めていた。
ある日、勤務中の門原に、恋人の春江が面会を求めてきた。規律一点張りの門原は、その春江を門前払いにした。浩三は門原の態度を見かね、春江を激励したが、その親切心も、門原の反感を増すだけだった。基地は急激な雨に見舞われた。浩三の宿舎のスピーカーから緊張し切った声が流れる。遠州灘沖××海里附近に於て突然の暴風雨で漁船が遭難したのだ。直ちに浩三は吉田三尉を伴って出動した。雨と風が容赦なくヘリコプターに叩きつける。一瞬ピッチレバーを握っていた浩三が機体の変調に気づいた。燃料タンク洩れだ。眼下には、漁船が、さかまく怒濤にもまれている。だが、これ以上飛べば、帰りの燃料がなくなる。自滅だ。基地の隊長水島に作業打ち切りの連絡を取る浩三の顔が苦しく歪む。船員を教えない口惜し涙がドッと溢れた。
遂に船員の生命は海に呑まれた。浩三は、門原以下隊員達の非難の的となった。門原は執拗に浩三を責めた。出動前に、タンクを検査しなかったのは、浩三の手落ちだ。彼の科学的自信は砕け散った。反省し苦悩する彼を洋子が懸命に励まし続けた。そして彼女は、浩三の父が以前暴風雨の中で、救難隊の到着が間に合わず、海で凍死したこと、それ以来、浩三が救難作業に打ち込むようになったことを知った。信頼できるのは科学の力だ・・・。
浩三は洋子の秘かな愛情にふれて、再び勇気をふるいたたせた。その頃、門原のもとに、春江から手紙が届いていた。それは「もう二度と逢うことはない・・・」といった悲痛な春江の意志であった。
天龍川の××地点でジェット機遭難の報が入電、サッと救難航空隊は色めきたった。万全の準備を終え、浩三の捜索機が飛び立つ。濃霧たち込める天龍川遭難現場の視界はゼロだ。低空飛行を試みた浩三は、真っ黒い煙を吐くジェット機の残骸を発見、この間、気流、気温、風力等綿密なデーターを調査した。
浩三が基地へ戻り、救難用具を整え、再びヘリコプターで飛ぽうとした時、門原が駈けつけた。彼は春江との愛情の岐点に悩み、酒気を帯びていた。だが門原は浩三の制止もきかず、無謀にもヘリコプターで飛び去った。霧は晴れない。現場上空を施回する門原機。彼は必死の中に、パラシュート降下を篠田降下員に命じた。地上に降りた篠田は重傷のパイロット2名の手当を行った。視界を奪われた門原は副操縦士神山三尉と共に夜明けを待ち続けた。基地オペレーションでは彼等の連絡を待機、緊張しきっていた。
夜が明けた。門原機救軽作業は成功。パイロットは生還収容された。だがラダーから吊り下っていた門原は、途中めまいを覚え失神、吸い込まれるように断崖へ落ち込んでいった。神山の必死の報せが基地に伝わる。洋子の電話で名古屋から春江が、愛する門原の危機を知り駈けつけていた。
急拠、浩三が門原を救出するべく、現場へ急行。決死の作業を続け、遂に門原の生命を救った。「ワー」とわくオペレーション・ルーム。涙でくしゃくしゃになった春江と洋子は思わず抱き合って喜び合った。「大村、どうも俺の負けらしいな・・・」今は男らしく己れの非をみとめる門原二尉。操縦梓を握って明るく笑う浩三。機は真っ青に晴れた果てしない大空に快音を響かせながら基地に向かって飛び続けた。