1962(昭和37年)/2/14公開 87分 モノクロ シネマスコープ 映倫番号:12597
配給:東映 製作:東映
大友柳太郎が、世をすねた浪人に扮し、騒然たる幕末の時勢を横目に睨んで、東海道を上り下りする美しい大名行列に不敵な挑戦を試みるという悲哀感溢れる恋と豪快な剣のダイナミックな意欲作。
東海道も西に近く、宮の宿から海上七里の渡しで知られた桑名の宿に、大名行列と見れば暴れこみ、道中差配の侍たちから恐れられている「行列十三」と呼ばれる男がいた。この背中一面に大名行列の入れ墨を持つ暴れん坊も、もとを正せばれっきとした直参旗本・柏十三郎の世をすねた姿だった。かつて斉藤弥九郎の道場「練兵館」で麒麟児と謳われていた十三郎が、「行列十三」という一介の無頼に堕ちたのは、幕府が初の遣米使節として米国に派遣する新見豊蘭守の随員を旗本の次三男から選んだ際、軽輩というだけでこの選に洩れたことがきっかけで、それ以来、幕府にも、旗本にも、侍にも、江戸にも、そして自分自身にも、愛想を尽かしていたのである。品川の土蔵相模を振り出しに、西へ流れた十三郎は、宮の渡しで暑さと船酔いに苦しむ一人の娘に、腰の印籠から薬を与えたが、桑名の宿に入って、その娘が女衒甚兵衛の手で女郎に売られることを知り、自分が買い取ることとなった。野暮ったい木綿の単衣一つの娘・おきくに、そんな気を出したのは、ほんの旅の気まぐれだったのである。だが、おきくを手放すのを惜しんだ甚兵衛が、土地の顔役・阿濃徳の身内、下山の太古を呼んできたことから、おきくの身を鉄火場の盃に賭けてまで引き取った夜、お互いに帰る道も身よりもない孤独な身を知り、その気持は変わった。阿濃徳が用心棒にと訪ねてきたのは、ちょうどそんな時だった…。