1963(昭和38年)/10/29公開 80分 モノクロ シネマスコープ 映倫番号:13379
配給:東映 製作:東映
父の仇討ちのために青春の日々を空しく費やした青年の心に人間らしい温みを呼び起こしたのは、仇の娘だった…。娘の清らかさを憎みながらも魅かれていく青年の葛藤を、東千代之介主演で描く。
日本で十指に入る剣客・根津軍兵衛の道場に現れた一人の浪人。鋭い目つきと孤独の影を纏うこの左十左という浪人は、少年の頃に軍兵衛に父を討たれ、それから十年、彼への復讐のみで剣技を鍛えてきたのだ。一武芸者として軍兵衛に試合を申し込んだ十左だったが、軍兵衛は一瞬で勝負を決める。その日から、十左の道場通いが始まった。何度撃たれても黙々と竹刀を握り続けるその姿に、軍兵衛はいつしか愛情をもって接するようになり、また軍兵衛の娘・刀根も魅せられていった。だがそんな刀根の愛情を十左は戸惑い憎む。ある日、居酒屋で不気味な浪人・鳥之介と出会い、刃を交えることになった十左は、鳥之介の全身から発せられる殺気に恐怖を感じ、それを見抜いた鳥之介は冷笑して立ち去ってしまう。それから数日後、道場に戻ってきた十左の様子は変わっていた。澄み切ったものが身の回りを包み、遂に十左は軍兵衛に勝った。しかしその心には何の喜びもなく、今までの憎しみがあまりにも虚しいものであると感じていた。そして十左の真意を知った刀根の「父を斬ったら、私があなたを斬ります」との言葉に、人を斬ることの恐ろしさを知るのだった。だが同じく十左の正体を知って怯える軍兵衛を、鳥之介が見逃すはずはなかった。軍兵衛は鳥之介の凶刃に倒れ、十左は鳥之介との決闘を迫る。この決闘に勝ったときは、新しい人生を刀根と生きよう…。そう心に誓って。