1954(昭和29年)/4/14公開
配給:松竹(受託配給) 製作:俳優座
佐藤正之の企画による俳優座映画。橋本忍と内村直也、渋谷実の協同脚本を渋谷実が監督している。撮影は長岡博之、音楽は奥村一。出演者は小沢栄、東山千栄子、東野英治郎、永田靖など俳優座の面々のほか、香川京子、佐田啓二、文学座の杉村春子、青俳の岡田英次などが参加。
元陸軍中将岡部は、その子ちか子、憲治と三人で義弟西野の家に居候している。保安隊にいる知人の黒住から、彼は元副官寺位がマヌス島の戦犯から帰ったことを聞く。寺位は上官三島の身代わりに戦犯となったのだが、その恨みを晴らそうと企てていると聞き岡部は落ちぶれた三島を訪ねる。この噂はデマだったが、寺位は再軍備促進団体あけぼの会を作り岡部を会長にする。憲治はアルバイトに落語家をしていたが、久美子の結婚式の夜、お妾稼業の浅子に誘惑される。岡部は南方で旧知の島村よねが金貸しをしているのを聞き、故郷の山林を抵当に三百万円を借りて運動の資金とした。この運動は順調に進み、岡部は昔の暴君ぶりを発揮する。そんな父をちか子は心配していたが、父が寺位との結婚を押しつけようとするので、愛する宗行の許へ家出しようと決心する。憲治は父の勲章を持ち出して浅子に与えてしまう。しかも岡部の夢は一朝にして破れた。寺位がやっていた密輸がバレて新聞に書きたてられ、再軍備運動の計画も目茶目茶になった。よねを訪ねると、かつては体まで許した彼女さえ冷たい態度であしらった上、憲治と浅子の仲を聞き、行って見ると勲章は犬の首にぶら下っている有様だった。
ブルーリボン賞助演男優賞(東野英治郎)