1958(昭和33年)/9/14公開
配給:松竹 製作:松竹株式会社
田宮虎彦の同名小説を楠田芳子が脚色した信州が舞台の青春物語。昇進第一回の井上和男が監督し、森田俊保が撮影した。山本豊三、桑野みゆきをはじめ、望月優子・瞳麗子・北原隆・村瀬幸子などが出演。そのほか桜むつ子・左卜全などが助演している。
信州の富士見高原。父を戦争で失くした野枝は、母のかずとの二人暮らし。彼女の育った花生部落は封建色が強く、分家は本家に頭があがらない。その本家へ東京から勇という学生が避暑にやって来た。勇は駅で道を尋ねたのがきっかけで野枝と知りあった。本家はお婆のすえと手伝いの光子の二人。光子が実家に帰って野枝が手伝いに来た。すえは東京の孫達爾や綾子を呼んだ。勇は作爺が世話してくれる乗馬や、野枝がいるので毎日が楽しかった。村では野枝と隣の源一が似合いと思われていて、以前は将来二人が一緒になるものと決めていた。しかし、今では野枝は秘かに勇が好きになっていた。勇も同じだった。達爾と綾子が着いた日から盆踊りが始まった。野枝は源一と出かけなければならなかった。勇や達爾が踊り場に来たとき、余興が始まりアナウンスが勇に唄を強制した。他所者に対する意地悪だった。勇の困惑を、野枝が助けてやり舞台に上って歌を歌った。このことがすえの耳に入り、分家の者が本家のお客に気易く口をきくのをとがめた。かつて、達爾が源一の姉の秋子と間違いを起こしたこともあるので、すえは勇のことを心配した。すえはかずを呼んで野枝が勇に会うことを禁じた。野枝はなんとかして勇に会おうとしたが駄目だった。何日か過ぎて、野枝は勇が帰京するということを耳にした。悲しい気持で野枝は馬を走らせた。そして、勇に会った。勇は盆踊りの礼をいい、いつまでも野枝のことを忘れないといった。いつしか二人の目には涙が一杯になっていた。