1959(昭和34年)/2/18公開
配給:松竹 製作:松竹株式会社
武者小路実篤の原作を松山善三が脚色、馬場当が潤色したホームドラマ。原研吉が監督、森田俊保が撮影をそれぞれ担当した。
翻訳者として文学の分野に名のある仕事をもちながら、佐田正之助は下手な絵を描くことを好む男だった。彼には大学生の正蔵と、綾子という娘がいた。正蔵は友人の川上とともに、親友で事情あって刑務所にいる田方を助けるため、奔走していた。ある日正蔵は、田方の許婚者秀子から、職を探している友人の千津子を紹介された。継母のいる恵まれぬ家庭をもつ千津子は、淋しい心を外の生活でまぎらわそうとしていた。そんな彼女に、正蔵は心をひかれた。妹の綾子も、兄の友川上を心の中で愛していた。田方の弁護士料を支払うために、正蔵と川上の臨時の翻訳のアルバイトがはじまった。綾子はその原稿の清書をひきうけた。千津子の仕事をどうしても見つけることの出来ない正蔵は、彼女を父の絵のモデルにすることにした。正蔵と千津子、川上と綾子の、二組の男女の心は、だんだんと近づいていった。その頃千津子の家では、彼女の縁談が起こっていた。父の上役の、のっぴきならぬ関係の人の所に、後妻として入れというのだ。弱い千津子にはそれをはっきりと断わることが出来なかった。父と継母は、彼女が正蔵と行き来するのを禁じた。正蔵の悩みは、父正之助と母の敏子を心配させた。綾子は、兄のために千津子に会い、彼女をはげまして、兄への彼女の愛情を確かめた。正之助の家の居間に、彼の一家と、川上と千津子の顔がそろった。悩みや苦しみをそれぞれに持ちながらも、すこやかに育ってくれた子供たちに、正之助と敏子は感謝した。