1961(昭和36年)/10/1公開
配給:松竹 製作:松竹株式会社
日本経済新聞連載の丹羽文雄の同名小説を椎名利夫が脚色、内川清一郎が監督。撮影は太田喜晴が担当している。
貧しい家庭に生まれた空閑虹子は、百武製薬の社長百武達郎から金にあかして飼育されてきたが、このまま大切な青春を提供していくことに耐えられなくなって「結婚するから別れて頂戴」と突然言い放った。虹子が結婚したい相手は、美宝堂広告課長薬王寺温。温は三年越しに彼女を愛していたが贅沢でわがままな虹子が平凡な家庭の暮らしは出来ないと思い、周囲の進めるままに家庭的な久仁子と結婚してしまった。しかし彼女は突然郷里へ帰ってしまい、何の音沙汰もなかった。そんな頃、百武が脳溢血で急死し、虹子があてにしていた土地も家の権利も全てが、百武の巧言だと知った虹子は、温の懐へ強引にとびこんできた。一時は困惑した温も、虹子が早手廻しにアパートを借りていることや、久仁子を出したのも温と結婚したい一心の虹子の仕業と判り驚きが諦めと変わり、仕方なく二人は生活を始めたが、虹子の性格は直らなかった。そんな彼女が温の友人沖の紹介で、学生徳久公生を知り、常に刺激を求める彼女は一度だけの約束で彼に肉体を許したので、若い公生は虹子に夢中になった。そんな毎日に気の晴れない温は、前から彼を慕っていて親切にしてくれる会社の事務員かよ子と話し合うことを何より心の拠り所としていた。やがて虹子は男児を生んだが、その世話はみな温の母文江がした。経済的にも行き詰ってきた虹子は、公生の求愛をふりきって働こうと、旧知のバー「雪」のマダム小村雪に相談したが、そこで紹介された拝藤繊維の御曹子晃に魅せられ、彼の出資でバー「なないろ」を開いた。虹子と気のあう温の妹正子も手伝っていたが、家庭の主婦という立場も考えない虹子に、温は別れようとした…。