1962(昭和37年)/9/30公開
配給:松竹 製作:松竹株式会社
菊田一夫原作から野村芳太郎と山田洋次が共同で脚色、野村芳太郎が監督したメロドラマ。撮影を川又昂が担当している。
「葉子さん……」涙をためて見つめている葉子の顔に、光晴の記憶は徐々によみがえりはじめた。しかし、葉子はその時もはや昔の新村葉子ではなかった。言葉もなく頭を垂れる光晴の姿を後に、あふれる涙をかくして葉子は病室を走り出た。その日、葉子は夫信介の母から、しばらく、兄健二郎の家に帰っているようにと言われた。姑は葉子が光晴のもとにしばしば通っていたのを知っていたのだ。その頃、東洋軽金属では社長以下幹部の信介、健次郎の間に新社屋ビル建築について、予定していた光晴の設計を取り止める話が持ちあがっていた。信介は葉子の抗議