1965(昭和40年)/4/10公開
配給:松竹 製作:松竹株式会社
川端康成の同名小説を斎藤良輔と大庭秀雄が共同で脚色、大庭秀雄が監督した文芸もの。撮影は成島東一郎が担当している。
島村が初めてこの温泉町を訪れた時、駒子は芸者ではなかったが、大きな宴会には頼まれて踊ることもあった。駒子は16の時に東京にお酌に出たが、旦那がついて、踊りの師匠で身を立てるつもりが、旦那の急死で実現せぬまま、この町で過ごしていた。島村は駒子に芸者を世話して欲しいと頼んだが、駒子は、欲望を処理する道具としてしか考えない島村に反発を感じた。また島村もそんな不思議なまでに清潔な駒子の姿に、侵し難い美しさをおぼえた。いつしか、駒子が島村の部屋を訪れるようになった。友達でいようという約束も、島村から破っていった。駒子は人目をしのんで夜更けに帰っていった。島村が、再び雪国を訪れたのは、半年後のことであった。車中、病人の青年を夫のようにいたわる女、葉子の不思議な目に惹かれた島村はその病人行男が駒子の踊りの師匠の息子だと知り驚いた。その頃駒子は芸者になっていた。二人は自由に逢瀬を楽しんだが、葉子の目は島村を冷たく刺した。島村は町の人から、葉子も駒子も師匠の養女だが、今では師匠をはじめ行男、葉子のめんどうを駒子がみているのだと聞いた。そして行男と駒子が許婚者であることも知った。この話を聞いた駒子は、行男との間を否定したが、それ以上何も語らなかった。島村三度この温泉場を訪れた時、師匠も行男もこの世の人ではなく駒子も今は、葉子と別れ、年期奉公の身であった。今は一人の男として、駒子を抱く島村の腕の中で駒子は、芸者としてもて遊ばれた自分をみて、口惜し涙があふれた。