1969(昭和44年)/1/25公開
配給:松竹 製作:松竹株式会社
松田寛夫と深作欣二が共同でシナリオを執筆し、深作が妖麗な謎の女をめぐる異常な性行動を描いたもの。撮影は川又昂が担当している。
藤尾竜子は、佐光が経営するクラブ「黒薔薇の館」で純粋至上の愛を歌い、男たちを陶酔させた。崇拝者たちは、種々の手段を講じて竜子に近づこうとしたが誰一人、彼女の気に入る者はいなかった。佐光もまた、彼女を愛するものの一人だった。ある日、竜子のかつての男が、復縁を迫り混血少年のジョージと決闘して即死した。その惨事を見て竜子の瞳は、妖しくも美しく輝くのだった。それから数日、竜子は佐光に自分の愛の遍歴を打ち明けた。それは、求め続けながらいまだ獲得出来ない絶対の愛についての嘆きだった。その時佐光は、彼女を慰め、「黒薔薇の館」を彼女の手に委ねた。竜子の意匠のもとに改装された「黒薔薇の館」は官能的な幻想の世界に変貌し、会員たちを驚かせた。「館」の主人になった竜子は女王の気品を備え、ますます男たちを魅了した。佐光はそんな有様に幸福だった。しかし、彼の幸福は長続きしなかった。佐光と亡妻との間に生まれた一人息子亘が舞込んで来たのだ。亘はヤクザの世界に入っていたが、組織を裏切った殺人行為で、警察と殺し屋の両方から追われていた。追いつめられた亘の姿は、竜子の心を強烈に惹きつけた。佐光は愛人を奪われた嫉妬から息子を罵り、殺し屋たちは竜子をも巻き添えにすると脅迫してきた。亘は死を覚悟し街に出る決意をした。竜子と亘との、死をも恐れぬ至上の愛が美しく燃えた。やがて、二人を探し廻る佐光は港でおり重なって息絶えている亘と竜子の姿を発見するのだった。