1970(昭和45年)/1/31公開
配給:松竹 製作:松竹株式会社
佐藤愛子の、同名小説(講談社刊)を椎名利夫が脚色し、長谷和夫が監督したホーム・コメディ。撮影は平瀬静雄が担当している。
ブームに乗ってますます人気を高める女流漫画家・佐倉秋子、抽象派の売れない洋画家・哲、娘・桃子、秋子の母・ツル、派出婦の高山--これが佐倉家のメンバーである。秋子と哲は恋愛結婚だが哲は収入のすべてを秋子に委ねていた。そんな二人を、秋子の漫画を扱っている雑誌の編集長・安藤や編集部員の松井定代が心配していた。だが、秋子は哲の将来を信頼し、不思議なほど冷静かつ鷹揚だった。その哲に、ある美術出版社から耳寄りな話が持ちかけられた。社長の荒垣は、なんと替りに社長になってくれという。お人好しの哲は、一も二もなく引受けたものの、会社は間もなく倒産、哲は娘の教育資金まで借金にとりたてられてしまった。秋子は、今こそ甲斐性なしの亭主に替って金融に奔走したが、男たちが代償に求めるものは同じだった。冷酷な高利貸の松宮、女実業家・富田の尊大さ、会社の元運転手・加山の好意、債権者西郷の息子の押しかけ下宿人、叔父の人生訓など、波乱の局面にみた赤裸々な人間像。秋子は日頃不甲斐ないと思っていた哲の暖かさと大きさを悟るのだった。