1972(昭和47年)/3/29公開
配給:松竹(受託配給) 製作:松竹 / 斎藤プロ
看守付きで仮出所した女囚と、刑事に追われる強盗犯が列車の中で偶然に隣り合わせになり恋に陥る。明日がない男と女の悲しい別離を描いたストーリー。脚本は石森史郎、監督は斎藤耕一、撮影を坂本典隆がそれぞれ担当している。
「頂くわ、お弁当」「口をきいたな、あんた」二人が初めて言葉を交わしたのは、そんなやりとりだった。日本海を左手に北上する長い旅の列車で、若い男が前の座席の年上の女にあれこれ喋りかけたあげく、口を開かせたのは、男が駅弁を進めたのがきっかけだった。図々しいが奇妙に憎めぬところもあるこの男は、列車が終着駅に着くと、女を付け回した。その間、問わず語りに、自分も私生児だったと淋しい生い立ちを話したりした。無表情でどこか陰のある女も得体が知れなかった。街外れで墓参り、村井晋吉という男を訪ねて素っ気無く追い帰されると、がっかりした様子でついてきた男に、松宮螢子と名乗り、三十一歳になると、初めて身の上らしきものを語った。二人の間にほのかな親近感が生まれた。男は螢子に、明日、旅館で会ってくれと強引に約束させた。しかし、その時刻に男は現われなかった。待ちぼうけをくわされた螢子が、ゆきずりの男の言葉を信じた自分の愚かさを恥じ、上り列車に乗った時、息をはずませて男が飛び乗ってきた。男の真剣さに螢子は初めて赤裸々な自分を告白した・・・。
毎日映画コンクール脚本賞(石森史郎):毎日映画コンクール監督賞(斎藤耕一):毎日映画コンクール撮影賞(坂本典隆):文部芸術祭新人賞(石森史郎)