1953(昭和28年)/8/19公開 88分 モノクロ スタンダード 映倫番号:1075
配給:東映 製作:東映
泥沼の中に咲いた哀愁の恋をめぐって登場する様々の人物を追いながら爛熟と頽廃のニ世相に喘ぐそれら人間像を一つの江戸市井風俗として描く、時代劇の新生面を拓く良心傑作篇。
江戸も末期に近い天保嘉永の頃。両国界隈の盛り場は泥棒横丁とも呼ばれる雑踏の町。そこで善男善女の評判を浴びる旅芝居一座の女役者、瀬川喜久之助の美しさに男たちはそれぞれの野心を抱いていた。生首の銀次や一座の楽之助、浪人鶴木勘十郎、大道芸人の生臭坊主龍運も、喜久之助の前で虚栄を張ろうとする。ある日、喜久之助への恋に狂った楽之助が舞台を投げてしまった。その渦中へ掏りと間違えられて飛び込んだ旅の男が、楽之助の代わりに舞台に飛び込んだのだが、淀みない芝居の呼吸に喜久之助は驚嘆した。その夜、執拗な楽之助を振り切った喜久之助は再びあの男、芳之助と再会する。翌日m、芳之助を芝居小屋に招いた喜久之助だったが、彼女には徳右衛門が後ろ盾となっていて、彼女は百両という大金を借りていたのだ。そのことを知った芳之助は、瓦全寺の賭場で百両を作ろうと足を踏み入れた。そこで龍運にイカサマを見破られ、逆上して嫉妬の兇刃をかざす楽之助を倒し、龍運の任侠心を買われた。百両を手にし、徳右衛門に縁切れを迫る。だがその百両は贋金であった。それを見破った徳右衛門は芳之助を目明し紋次の縄目にかけさせてしまう。喜久之助の涙にせかれた鶴木は、贋金を持って賭場に向かい、龍運に憤怒の声を浴びせる。龍運も自ら贋造を持って自首しようとする。そして鶴木も、但馬屋に向かっていく…。