1955(昭和30年)/7/20公開 89分 モノクロ スタンダード 映倫番号:1840
配給:東映 製作:東映
花柳界という特殊な世界の中で環境が生んだ性格から生み出された悲劇を骨子として、相愛の男女の流転の姿を母と子の新旧思想の対立を描く。新派の当り狂言、三好一光原作の「片時雨」を題材に映画化した珠玉の母映画。
昭和八年の柳橋、紅燈の町に小染と栄次という、古い世界の義理を尊び、深い友情で結ばれた二人の芸奴がいた。栄次は船会社の重役・山田剛造に落籍されて花柳界を去ることになった。だが小染は、富岡産業の御曹子である信一郎と愛し合いながら、身分の違いにより、男の行く末を思うと自ら身を引かざるをえなかった。小染は信一郎の子供を宿していたが、生まれてきた子供を信太郎と名づけ、間もなく二人は柳橋からひっそりと姿を消した。それから幾年、戦乱の世を迎える伊豆の町に小染の姿があった。今は信太郎の成長だけを生き甲斐にしていた小染だったが、浅井と言う富岡家からの使いの者が、信太郎を引き取りたいと持ちかけてきた。そこで近々南方に行くという信一郎と再会し、小染の心は愛情にうずく。戻ったら再び親子で会う約束をして、信一郎は日本を離れ、小染は信太郎のためを思い知人の旧家に預け、縋りついてくる信太郎を厳しく追い返す。母の愛情を拒まれた信太郎を、流し芸人の富之助がやさしくいたわり、その娘みち子と信太郎は仲良くなっていった。戦争が終わり、小染は戦死した信一郎を偲びつつ、本名の千代に戻し神楽坂の料亭で女将としての采配を振っていた。成人した信太郎を大学に通わせ、栄次の一人娘・百合子を嫁に迎える日を楽しみにしていた。ある日、信太郎はとある祝宴で美しい芸者・花奴となったみち子と再会する…。