1955(昭和30年)/8/29公開 94分 モノクロ スタンダード 映倫番号:1918
配給:東映 製作:東映
吉川英治代表傑作を映画化した怪奇捕物篇。八百八町を恐怖に落した謎の架娑がけ斬りの女殺しが呼ぶ次々の怪事件。殺された女の左中指は黒爪で、しかもその指だけが斬り取られるという。この事件にかつて名与力と謳われた塙江漢が乗り出し、一世一代の推理を絞って悪魔の罠を解明する。円熟の芸の境地に達した市川右太衛門が老与力と悪の権化の二役を演じ、謎と戦慄が横溢する血風篇。
夜明けの大川端で、左手の中指が切り取られ、袈裟懸けの一太刀で惨殺された美女の死体を運ぶ男を南町奉行所の同心が捕まえた。この事件について、与力の東儀はかつての名与力・塙江漢の助力を仰ぐが、江漢は一言言葉を与えただけで、事件への介入を善しとしなかった。東儀らは江漢の助言に従い、この男・岩松を釈放して尾行することにしたが、岩松を追って笛指南の由起の家に踏み込むと同じように袈裟懸けの一太刀で殺された男の死体が発見する。そしてその前を、なんと江漢の息子・郁次郎が逃げ去っていった…。郁次郎が犯人である証拠も見つかり、更に証拠品の印籠の中には更なる殺人を予告する密書も見つかった。そして予告どおり、我孫子八幡の境内で巫女の月江が袈裟懸けで殺されていた。東儀らはこの現場に現れた郁次郎を遂に捕らえるが、この知らせを聞いた江漢は事件解決に乗り出し、まずは牢中の息子に対面するも郁次郎は許婚の花世が事件と深いつながりを持ち、殺された由起と月江も関係しているとだけしか答えなかった。江漢は郁次郎の無罪を信じ、花世の過去を知るために彼女の母を訪ね、花世がさる大名の血を引いており、さらには由起と月江が花世の母であり、三人とも左手の中指の爪が黒く染まっていることを知った。江漢は事件の核心に近づいていくが、その裏には三ノ輪八万石のお家騒動が絡んでいた。やがて、郁次郎の処刑の日が近づいてくるのだが…。