1956(昭和31年)/6/14公開 83分 モノクロ スタンダード 映倫番号:2303
配給:東映 製作:東映
山手樹一郎原作小説を映画化。主演の東千代之介が初めてのやくざ役を演じる。侍の世界の虚偽と矛盾に反抗した青年武士が、遊侠の群れに身を投じながらも、ひたすら真実一路を生き抜こうとする姿を描く。
甲州の峠道を、一人の股旅烏が登ってくる。名は「やらずの勘八」。勘八は六年前までは直参旗本・織部主膳の息子・信太郎であったが、美濃部の派閥の争いに巻き込まれ主膳は閉門蟄居、信太郎自身も七年処払いを命じられ、武家社会の醜さに愛想をつかして家を出たのだった。さて、この甲州勝沼宿では勝沼三右衛門と獅子鼻新兵衛の両親分が縄張りを争っていた。元々は仏の三右衛門と呼ばれていた勝沼親分の身内でありながら、新兵衛は甲府勤支配頭に赴任してきた鈴木将監の曲がった根性に取り入って、三右衛門と別れて自らの縄張りを広げていた。三右衛門の娘・お浜に横恋慕する将監は、新兵衛の手下を使ってお浜をさらおうとしていた。お浜を助け出し、三右衛門の家に草鞋を脱いだ勘八は、彼の心遣いに感激して単身新兵衛の家に乗り込むと火の出るような小粋な啖呵で度肝を抜かせた。そして勘八は再び江戸に向かって旅立つのだが、この親切が仇になり、新兵衛一家は三右衛門を叩き斬ってしまった…。そんなことはつゆ知らず、勘八は道中で巡礼姿のお雪がならず者・雲鉄に襲われているところを助け出す。実はこのお雪、かつては織部家の隣に住んでいて、勘八こと信太郎の許婚であり、父親が甲府勤番の組頭に任じられるも鈴木将監の乱脈を幕府に訴えるために織部主膳を頼って江戸に向かっている途中だった。勘八は自分の素性を明かせぬまま、お雪を助けることを心に誓うのだが…。