1958(昭和33年)/10/14公開 98分 カラー シネマスコープ 映倫番号:10903
配給:東映 製作:東映
仇と狙う者、狙われる者。愛憎二筋に悩む悲運の美剣士権八の、数奇波瀾の人生模様を、連綿たる情緒の中に浮き彫りにする、秀麗橋蔵の魅力篇。
姫路城中の御前試合で、姫路藩剣道指南番宗方鉄心と対決し、相打ちの判定で引き上げた無名の長州浪人くれない権八は鉄心の門弟たちの闇討ちに合った。止む無く闇を払った権八の刀に、闇討の制止に駆けつけた鉄心と、闇討ちの首謀者稲田辰之進が倒れた。武士の家の習いで、鉄心の娘比呂恵と辰之進の弟辰馬、富士馬の三人は、京へ向かったという権八の後を追って仇討ちに旅立った。そうとは露知らぬ権八は、京の街で酔っ払い武士に絡まれている清純な娘を助けた。その娘こそ比呂恵だった。三人の追手から逃げ失せた権八は、江戸の侠客花川戸長兵衛に匿われ、客分として日を過ごしていた。権八は比呂恵に狂おしいまでの情熱をかき立てていたが、満たされぬ気持ちからいつしか深川芸者の小夕と情艶の世界をさまよう様になっていた。小夕は権八を愛する余り、比呂恵に対する愛情一筋に全てを賭ける権八を妬んだ。哀れな女心が辰馬達が数十人の助勢を得て、背水の陣をひく材木河岸に権八を導いた。権八の体は復讐心に髪逆立てて突進する辰馬と激しく入れ違ったと見るや、一閃左右に数人なぎ払い、そして比呂恵の姿を求めて脱兎の如く身を翻した。「あなたを苦しめて生きる辛さがたまらなくなった」と権八は万感込めてつぶやく。「くれない様の胸に帰れただけで、故郷も家もいりませぬ」比呂恵が権八の胸に崩れ落ちた・・・