1960(昭和35年)/1/27公開 90分 カラー シネマスコープ 映倫番号:11533
配給:東映 製作:東映
麻薬団の本拠を暴かんものと、銃弾渦巻く魔の暗黒街に飛び込んでお馴染み千恵蔵が二丁拳銃にものいわす、意気詰まる迫力と波瀾を興趣の中に描く壮絶ギャング映画の決定版。
粉雪が舞う北国の港町―とある居酒屋の中で一見やくざ風の二人の男が満足そうに盃を傾けている。たった今この土地のやくざ川勝組の乾分たちを相手に派手な立廻りを演じて叩き伏せた暴れ牛のツノ吉とキッドの謙である。
二人は九州卍組の乾分であったが、前社長の仙羽庄造が麻薬取引きの帰途、何者かに射殺された時、その場に居合せた事から、事件のほとぼりの冷めるまで草桂をはいてこの町に流れて来たのだ。
その時、一人の男が繩暖簾を分けてのっそり入口に立った。一目で無法者と知れる一癖ありげな異様な風態、数日前連絡船の中でツノ吉を散々に痛めつけた月の輪の熊次と自称する暴れ者だ。熊次にはマキというお侠な娘が一人ついていた。自ら指名手配の兇悪犯だとうそぶく熊次は、折から乾分の仕返しに現われた川勝親分とその幹部・流れ星の竜三の拳銃をものの見事に弾き飛ばすという鮮やかな拳銃さばきを見せた。並はずれた熊次の腕と度胸に魅せられたツノ吉と謙は、すっかり彼と意気投合してしまった。
だが、ツノ吉はこの土地の繩張りを一手に収めようと計る結城の徳三に金で買収され、川勝親分を暗討ちにするという油断の出来ぬ男だ。この為、熊次は、川勝の娘・静江と乾分・竜三に仇としての追求を受けることになってしまった。
貨物の中へもぐり込んで東京ヘ舞い戻った能次、そしてマキ、ツノ吉、謙の四人は博奕で儲けたというツノ吉の言を信用し、スキー旅行と洒落込んだ。この旅行ですっかり古巣が恋しくなったツノ吉は、謙を説得、熊次を仲間に加えて九州へ帰ることにした。
拳銃の硝煙が不気味に澱んでいる無法街。卍組の新社長篠勝男がこの繩張りを支配している。熊次はその腕を見込まれて用心棒に雇われた。
或る夜、ツノ吉と共に呑み屋「入船」の暖簾をくぐった熊次は、意外にもそこで殺された川勝親分の娘・静江に会った。熊次は、川勝を殺したのは自分ではないと自信をもって彼女に告げた。千鳥足で外へ出た熊次に一つの影が這い寄った。熊次を仇と狙う川勝の乾分・竜三である。夜霧に濡れた路上に対決する熊次と竜三、しかし拳銃を捨ててくるりと背を向けた熊次の、自信に満ちた態度に、竜三は黙然と霧の中へ消えていった。その時、物陰で二人を伺っていたツノ吉の凶弾が竜三に向って火を噴いた。
一方卍組の社長・篠は、西日本一帯の麻薬ルートを独占する為の王宝山との重大な取引を目前に控えていた。篠はこの取引に自分の跡目キッドの謙を指名した。篠の妹・純子は謙にほのかな想いを寄せている。謙もまた、彼女と結婚する為に篠の反対を押し切ってこの社会から足を洗おうと心を砕いていた矢先だった。王一味との取引が終りに近づいた時、彼らの前に一人の女が引出された。王の配下が運転するパトカーと知らず、恋人・謙の危機を急報した純子の姿だ。その背後には王の情婦・波子に救われ、今は王の乾分となった竜三の姿が見える。このいきさつを謙の裏切りと誤解した篠の手に拳銃が不気味に光った。渦巻く銃弾の中を純子をかばって必死に逃げる謙。熊次が篠の命令で二人の後を追った。
キャバレー「リコ」の地下サロン。純子までも殺したと言って帰って来た熊次に怒りを覚えた篠は、ツノ吉に熊次殺害を命じた。しかし謙と純子は無事だったのだ。すべては寝返った熊次のカラクリだった。篠とツノ吉の悪事の数々をばらす熊次、その背をいつのまにか王一味の拳銃が狙っていた。王の手には、熊次こと警視庁警部・壇原武夫の写眞が握られている。前科者ドラマーの桜井から手に入れたものだ。勝ち誇る王と篠一味。不敵に笑う壇原警部。折しも、マキ、実は婦人警官・佐藤の急報で警官隊が駈けつけた。熊次が飛燕の早業で、シャンデリヤを射落したのを合図に展開される凄絶の死闘。銃撃戦はホールから地下射撃室へと続く。激闘数刻、遂に王をはじめ悪の一味は悉くその縛についた。重傷を負ったツノ吉は、虫の息の中で自分が川勝親分を殺したことを竜三に告げた。
暗黒街に新しい夜明けがやってきた。壇原警部の明るい顔は一際輝いていた。