1960(昭和35年)/3/15公開 78分 モノクロ シネマスコープ 映倫番号:11612
配給:東映 製作:東映
“ずべ公”と呼ばれる一群の不良少女たちの生態にスポットを当て、立派な社会人に更生したいという彼女たちの夢の実現をめぐってまき起る笑いとペーソスを軽快なテンポで描いた異色ドラマ。
黒雲会幹部の岸田は、仲間内でも名の通った売り出し中の若手で、会長の黒川が実の息子のように可愛がり、大学まで出してやったというインテリやくざである。チンピラのジミイは、この岸田に憧れる紅顔の美少年。乾分にしてくれとダニの様につきまとうジミイをもて余して、岸田も手を焼いている状態だ。というのも、やくざの世界も当局の取り締りのきびしくなった昨今では昔のようなたかりやカツアゲの自由は御法度で、三百人もの乾分を抱える黒雲会としても苦しい生活なのである。だがそこへ新興やくざの大穴組が割り込んできたとあっては黙ってはいられない。黒川の命令を受けた岸田は繩張りの話をつけに大穴組へ乗り込むが、女組長アン子の物凄いお色気に当てられて退散させられるという憂き目に遇ってしまった。
黒雲会としては何とかして事態の収拾を考えなければならない。岸田は一案を黒川に提出した。それは、街にはびこる緋桜組番長の京子を頭とするずべ公たちを利用するという計画であった。岸田は、緋桜組と番線グループのずべ公同士の喧嘩の仲裁をした事があり、更生させ会社に就職させることを餌にして彼女たちを利用しようというわけである。彼女たちに目当ての会社の内情を探らせ、弱みをネタに強請るのが目的なのだ。計画は直ちに実行に移され、ずべ公たちに活け花、日舞、英語などの教養が次々と教え込まれる。そんな悪計とも知らず黒川を信じて更生しようと必死の彼女たちだが、短期間の速成教育では就職試験は全て失敗という結果となってしまった。岸田は新たな案を考え出した。ずべ公たちを災害地救済にかり出してその善行を大々的に宣伝する…つまりは、ずべ公を天使にでっち上げて就職のきっかけを作るのである。折しも宇宙火薬工場の大爆発が発生し、黒川は、好機とばかりにずべ公たちを現場へ送り込んだ。真心をもって火薬を運び出すという危険な作業と取り組む真剣な彼女たちの姿に、いつしか黒川も不純な計画も忘れて火薬を担いでいた。そして、全ての報道機関がずべ公たちの善行を報じたことで、京子、秋子、ひろ子、正子の四人が宇宙火薬工場の社員に採用されし、岸田の計画はその一歩を進める事に成功する。だが、黒川の心の隅には、彼女たちをこのまま幸せにしてやりたいという気持がいつしか湧いていた。そんな黒川の態度に飽き足らない黒雲会の代貸・月村は、大穴組の大幹部・峰と結託して繩張りを奪い取ろうと策を巡らしていた。最近やっとの思いで大穴組にもぐり込み、念願のやくざに仲間入り出来たジミイは、この計画を知って心よしとはせず、事あれば岸田に企みを知らそうと懸命だった。一方京子は、就職するや忽ち秘書に抜擢されるという出世をするが、それも束の間、変な真似をする村上専務にカンシャクを爆発させ、威勢のいい仁義を後に会社を飛び出してしまったのだ。その京子に月村が黒雲会の悪計を漏らした。心から信じ、恋していた岸田、そして黒川に裏切られた京子の胸の怒りは収まらなかった。京子は、工場で拾った工員・高見沢の手帳を岸田の胸に叩きつけた。手帳には強請りのネタとなる社長失脚を狙い工場に放火したという村上専務の悪計が細かく記されてあったのだ。ずべ公仲間を集めた京子は黒雲会に殴り込みをかけた。今は真心というものをその身に味わっていた黒川は、京子たちの前に前非を悔いるが、繩張りを頂くチャンスとばかりに月村がいきなり黒川を殴り倒した。そこヘ急を聞いて駈けつけた岸田が鉄腕を振って月村一味と対決。京子の真心に岸田もやくざから足を洗う決心をしたのだ。一方大穴組の峰も月村の加勢に駈けつけるが、思いがけないアン子の大眼玉を食ってしまう。大穴組は今日限りやくざを捨てて現代的経営の会社になるというのだ。今の世の中、やくざでは食っていけないという岸田の言葉をジミイがそのままアン子に進言した結果なのである。今はこれまでと奮いたつ峰、月村一派と、岸田、黒川それに京子らずべ公たちの大乱闘が始まり、岸田危うしとばかりジミイもこの渦中に加わった。そこヘパトカーのサイレンが鳴り響き、やくざは一掃され、宇宙火薬工場の悪計も曝露された。
そして、誠実な人生へ向って再出発する岸田と京子の希望に溢れた姿が美しい街の夜景に消えていった。
「ずべ公天使 」シリーズ(2)