1960(昭和35年)/4/26公開 77分 カラー シネマスコープ 映倫番号:11725
配給:東映 製作:東映
絢爛豪華、女傑ひばりの艶姿!歌舞伎の世話物、三人吉三のお嬢吉三に美空ひばりが扮し、新たな魅力をふりまく、娯楽時代劇の決定版!
湯島天神に近い盛り場で、酔いにまかせて茶屋女・おとせに無理を言う悪侍の一団があった。勘定奉行・有馬駿河守の弟・源之進の一行だが、人込みを割って間に立った祭文売りの吉三に簡単にノサれてしまった。
この祭文売りの吉三は、通称お嬢吉三と呼ばれ、もとはれっきとした武家育ち、何者かに暗殺された元勘定奉行・矢部綿吾の娘で、親の仇とたった一人の弟を探しつつ祭文売りに毎日を過していた。
この頃、駿河守は勘定奉行の地位を悪用、豪商相仮屋忠兵衛と結託して抜け荷の悪事を働いていたが、この駿河守こそ矢部家の家宝・庚申丸を奪って失脚させ、あまつさえ綿吾と妻の忍を斬った男だったのだ。
しかも、駿河守一味の悪事は重なった。相模屋を使って源之進は茶屋の看板娘おとせに再度妾奉公を強要、断わられると三十両の借金の返却を迫った。
おとせファンの駕龍屋権三と助十は、得意の脚にものをいわせて金の工面に走り廻った。
まず、矢場の用心棒お坊吉三、次が吉祥院の和尚古三、最後がお嬢吉三、だが三人が三人とも三十両の大金を直ぐには調達出来なかった。
その後、庚申塚の大川端で、通り掛った相模屋を呼び止める声があった。
お嬢吉三だ。
お嬢吉三はおとせ救いのため相模屋を川に突き落し、三十両の胴巻を奪うが、吉三の前に、同じ胴巻きを狙うお坊吉三が懐手で立ちふさがった。
そこへ和尚吉三も加わっての三つ巴の争奪戦が展開されたるが話してみれば皆、おとせのため。三人はすっかり意気投合して兄弟分の杯を交すのだった。
一方、源之進が強引に屋敷に連れ込んだおとせに今度は駿河守が魔手を伸ばす。危機一髪、お嬢吉三は屋敷に飛び込んでおとせを奪うと追手を振り切って吉祥院に逃げ込んだ。
お嬢はその時、駿河守の左手に小指が無いのを見た――お嬢の仇にも確か小指が無かったはずだ。
その頃、お坊吉三と連れ立って歩いていた矢場の娘・お栄から財布をスリ取った男があった。韋駄天の三次だ。
お坊の太い腕に組みしかれた三次の胴には古い守り袋が下っていたがそれはお嬢と同じものだった。
全く偶然のことからお嬢と三次は、お坊の手引きで姉弟の対面をすることが出来た。
駿河守は悪事の露見を恐れて相模屋を斬り、返す刀で庚申丸をもって金を強請る昔の仲間・畔倉一角を倒したが、苦しい息の下から語る畔倉の告白によって、駿河守加悦が仇である確証を得たお嬢は、若年寄・神永備前守から仇討赦免状を受け取った。
だが、駿河守も黙ってこれを見ていたわけではない。神永邸に爆薬を仕掛け、備前守とお嬢を同時に消さんと諮るが、三次の働きによって二人は難を逃れ、お嬢は赦免状を手に駿河守の潜む有馬邸に斬り込んだ。
さらにお坊吉三に和尚吉三までもが助太刀に駆けつけ、お嬢は見事に親の仇を討つことが出来た。
「月は朧に白魚の篝火も霞む春の空」お嬢、和尚、お坊、三次と、今日は晴れて芝居見物、舞台のお嬢吉三の大見得にいつまでも拍手を送っていた。
「ひばり十八番」シリーズ(2)