1960(昭和35年)/5/31公開 79分 モノクロ シネマスコープ 映倫番号:11689
配給:東映 製作:東映
盛り場にスリルとスピードとセックスを求めて生きる愚連隊の生態を抉り、悪の道から抜け出て青春をモーターボートに賭ける少年を描いた強烈な青春アクション。
黒く澱んだ隅田川の川面に白い波濤を蹴立てて突っ走るモーターボートには、たった今警察を釈放されたばかりの槙夫と恋人弘子が乗っていた。槙夫は街のチンピラ愚連隊に混ってストライキのピケを張る労組員に殴り込みをかけた為、警察の厄介になっていたのだ。久しぶりに吸うシャバの空気のうまさ、若い槙夫は御機嫌の弘子を抱いて狂ったようにボートを飛ばした。かつては槙夫も弘子と同じ臨時工だったが、希望のない単調な毎日は彼の若さを支えきれず、ある日、職長を殴り倒すとそこを飛び出してしまったのだ。金に詰まった彼が身を投じたのは、盛り場を根城にタカリ、恐喝、パチンコの景品買い等を常習に生きている勇やサブ、トム、安雄、秀坊たちチンピラの群れだったのだ。しかしこんなヤバイ橋を渡りながら生きている彼等の世界も厳しい掟に支配されていた。繩張りを握る堀江組の幹部・村井にその上りの殆んどをピンハネされるのである。槙夫たちの不満は徐々に募り、兄貴分の勇が経営するバー「ブルーノー」に集った彼等は、村井の裏をかいて密かに上りの一部を掠め取ろうという勇の言葉に瞳を輝かすのだった。モーターボートに若い夢を賭けていた槙夫もまた、選手養成所に入る金を作るため仲間に入る決意を固めた。
しかしこの秘密は意外に早く村井の耳に入った。チンピラの一人・安雄が洩らしたのだ。サブたちの前で勇は村井たちに叩きのめされてしまう。だが勇の野心はもっと深いところに秘められていた。それは槙夫たちチンピラを利用して村井の繩張りを奪うことなのである。勇は村井たちの悪事を警察へ密告する一方、取調べの目をゴマ化すために、槙夫やサブたちに足を洗う事を励めた。勇を信頼している彼らは、その日からネクタイや洋服を売り歩くが、ヤバイ仕事よりはと思われたこの押売りも考える程甘いものではなかった。惨々な売上げにすkkり意気消沈する彼らを前に、勇は、村井たちのように悪どく稼ぐために今日から自分が村井に代わって繩張りを支配すると昂然とうそぶくのだった。今や単なるやくざの組織と化した勇たちに見切りをつけた槙夫は、念願の競艇選手として生き技こうと仲間から足を洗う決心をする。
、新人競艇選手養成所に入所した槙夫は、厳格な規律正しい集団生活の毎日が続く中、希望に胸を膨らませ血の出るような激しい訓練にも立派に耐えていった。
一方新しい繩張りの強化に狂奔する勇は、槙夫を仲間に引きとめるために策を弄し、彼の恋人・弘子を毒牙にかけてしまう。傷心の弘子はその憂さを槙夫の中学時代の学友・一郎にぶつけていった。一郎は大学受験を前に猛烈な勉学に明け暮れる灰色の生活を送っており、二人の狂気じみた遊びは続いた。
競艇選手の養成期間を終えて戻った槙夫は、友達の武から弘子の一件を聞いて怒りに奮え、勇と対決するが、勇は、折から出所した村井とその一味に簡単に殺されてしまった。怒りのはけ口を捜す槙夫は、憑かれたように堀江組へ殴り込みをかける始末。ドスがうなり銃弾が飛び交う中、村井たちに頭からぶつかってゆく槙夫。幾人かが血を浴びて路上にのたうち、秀坊も苦悶の中にのけぞった。そこへ警官隊が凄まじい表情をみせて駈けつける。村井たちは抵抗を断たれて連行されて行った。それは悪夢のような一瞬の乱闘だった。槙夫の憤怒はいつしか激しい恐怖へと変っていた。彼は群衆の中をかき分けて走った。俺は何をしようとしたんだ? みんな散りぢりになってしまった。弘子はどこへ行ってしまったのか。弘子は明るい娘だった。そうだ俺もくじけるものか!何でもいいからぶつかって行くんだ。俺には競艇という夢がある!
晴れ上った江戸川競艇場では轟音と共に六隻のモーターボートがスタートした。その中には晴れのハンドルを懸命に握る槙夫の姿がある。そして弘子の鮮やかな笑顔がどよめく観衆の中に揺れていた。