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遥かなる母の顔 

Mother's Distant Voice

1960(昭和35年)/10/5公開 80分 モノクロ シネマスコープ 映倫番号:11952 
配給:東映 製作:東映

優しい母の面影抱き、そっと呼びかける幼い心。ひたむきに母を慕う少女の気持が頑なな大人たちの心を和らげ、遂には父と母を真の夫婦愛に目覚めさせるという美しき珠玉篇。

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ストーリー

富国不動産株式会社社長・飛島大五郎の愛娘・千枝子の通学パスに秘められているダイヤの指輪には、小学五年生の少女の母を想う万感の心がこめられている。立派な邸宅に住み不自由ない生活にあるとはいえ、千枝子の胸に染みとおる母への想いは日々に募るばかりである。飛島邸の家作に住む小学校教員の海野一家はそういった千枝子の寂しさを知り、さりげなくいつも慰めていた。海野の子供たち、達夫、のりこは、東京タワーや鎌倉海岸のヨット遊びなどに千枝子を引っ張り出しては遊んでいた。
渋谷の裏通りに面した洒落た二階建てのアザミ洋裁店。そこには五年前、無教養な夫に嫌気が差して飛島邸をとび出した千枝子の母・光代が、妹の大学生・多賀沼康子と住んでいる。家庭生活の夢に破れた光代にはアザミ洋裁店の銀座進出が唯一の夢であり、その援助を買って出ている三英商事社長・鹿地の申し出を、彼女は鹿地の自分への欲望を知りつつ、妹の批判にも耳を貸さず、受けようとしていた。
飛島大五郎には若い妾・神田奈美子があった。彼女は中野の飛島邸に入りこむ野心を持っており、折あるごとに大五郎に言い寄っていたが、千枝子が可愛い大五郎はそれをはねつけていた。こうした父としての大五郎の気持ちには、千枝子がこの頃、海野家へ足繁く出入りしているのが気に入らず、あげくに海野が何かもくろんでいるのではなかろうかとさえ疑う。海野夫妻の行為で千枝子が後楽園球場のナイターへ伴われていった翌日、大五郎は秘書の金井を通じて家作の明け渡しを海野一家に迫った。海野は飛島大五郎の意図を知り、移転を承知するが、母を恋い慕う千枝子を哀れに思った。海野の妻・幸子は光代にその事情を話して飛島大五郎と会うことをすすめたが、鹿地との話が進行している現在、光代は娘に心ひかれながらも幸子の話を断るのであった。
突然の海野家の移転で寂しく達夫たちと別れた千枝子は、おしかけてきた奈美子をもてあましている父の姿を見て、幼心にも憤然とした。折から海野の家を訪れた光代の姿を、傷心の千枝子が見出したが、彼女は母の胸へ駈け寄らず、そのままその姿を飛島邸から消してしまった。海野一家を探し求め、漠然と池袋駅に下車した千枝子はたつまきの三郎という与太者と知り合い、麻薬の密売の手先に利用されてしまう。千枝子の行方不明で焦燥の大五郎は、城南大学へ康子を訪ねて協力を乞うた。
クラブ・コーバカヴァナ、そこでは銀座進出の夢に成功した光代と鹿地が踊っていた。二人は情事への旅に出発するところでもあったのだ。駆けつけた康子に千枝子の家出を聞かされても旅を強行しようとする光代、だが千枝子がダイヤの指輪を胸に抱いているという話を聞かされて、光代の母情は燃えた。彼女は飛島邸へと駈け付ける。飛島邸の広間、心痛の一座に電話のベルが鳴る。千枝子が警察に保護されたと知らせてきた。玄関に佇む光代を尻目に大五郎の車が表を出る。だが、雨の中を駈け出す光代の泣き濡れた目に、静かにバックしてくる車が映った…。

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