1960(昭和35年)/10/12公開 63分 モノクロ シネマスコープ 映倫番号:11931
配給:東映 製作:東映
金もあり、力もあり、男っぷりも抜群と三拍子揃った田舎侍が、お遊び修業に花のお江戸へと飛び出した。そこへ、美人の掏摸がお色気攻撃を仕掛けるが…。軽快なコメディ時代劇。
ある夜、お江戸八百丁のど真ん中で殺人事件が起きたが、こともあろうに事件の現場で道を尋ねるトボケた男があった。剣術ならぬ色事修行のため常陸の国・潮来からはるばる江戸にやって来た只野獏太郎だが、田舎ッぺのくせに男が良くて腕が立ち、お金もあれば力もあるという獏太郎にすっかり気を呑まれてしまったやくざたちは、死体を捨てるなり雲を霞と逃げ出してしまった。
ところがこの獏太郎に目をつけたのが、美人で評判のベテランスリのお島。近来まれないいカモとばかり手練手管の大サービスだ。獏太郎が国から送られてきた為替の金を受けとりに行った相模屋には、一人娘のお澄がいたが、その夜、おキャンな彼女は獏太郎を引ッ張って大衆料理屋に行き、意気投合して盃を重ねていた。そこへ、どやどやと入ってきたのが地獄道場の暴れん坊たち。早速、因縁を吹きかけて道場主のごろんぼ浪人・平出大次郎は鋭く獏太郎に斬りつけたが、同心の三田村市兵衛が仲に入ってことなきを得た。獏太郎の男心に惚れ込んだ三田村は、ある夜大川端の料亭に獏太郎を招待するが、三田村から、過日の殺人事件の被害者が油問屋の越前屋の番頭と聞いて、獏太郎は緊張した。お澄と越前屋の息子・清吉との婚礼の日が近く、二人の幸せを心から祈る獏太郎は、事件の背後に地獄道場の殺し屋を使って越前屋の乗っ取りを策す同じ油問屋の丸金屋が動いていることを知って立ち上がる。
ちょうどその頃、長の患に伏す越前屋危篤の知らせを受けたお澄と清吉は、駕籠を飛ばして根岸に向かう途中、抜刀した地獄道場の殺し屋たちに襲われる。間一髪、お島直伝の歯切れのいい啖呵と共に飛び込んで来た獏太郎は、平出をはじめ地獄道場のごろつきを叩き斬った。お澄と清吉は越前谷の病床で目出度く結ばれ三田村は丸金一味を捕らえた。いまは獏太郎の財布どころか、その男心にぞっこん参ってしまったお島の手をやさしく取ると、獏太郎は青い星空の下に消えて行った。