1960(昭和35年)/10/23公開 68分 モノクロ シネマスコープ 映倫番号:12000
配給:東映 製作:東映
様々な悪徳がひしめくジャズ界の舞台裏。そのからくりを利用して、自らスターの座にのし上がろうと捨身でタフな闘志を燃やす現代娘の姿を鮮烈なタッチで描破した青春篇。
七色のライトを浴びて登場するジャズシンガー、熱狂するステージ。光枝もいつかは必ず歌手になろうと貪欲なまでの野心を持っていた。そのためには、恋人も友人も利用すべきものは全てを利用しようという凄まじい処世術がその胸底に秘められていた。彼女は、靴磨きをしているアル中の父・幸吉と工員の弟・茂夫の三人で貧しく暮らしていた。勝気な光枝は、いつしかずべ公仲間に交わり姐御株におさまっていた。矢島組のチンピラ・浩一は光枝の奔放な性格に惹かれ、二人は恋人同士だった。素人のど自慢に出場してジャズを唄った光枝は、浩一をはじめとするチンピラ、チョロ、モサ、修、タツらと計って、大衆の注目を惹こうと大胆にも舞台で自分のスカートを引きずり下ろさせた。演出は成功し、光枝は二等に入り、そのドライぶりが華やかな人気を集めた。光枝に対する予想以上の反響を見た浩一は、マネージャーとなって、光枝の歌手への欲望を満たそうとする。光枝はスターになるために本格的な唄のレッスンを受けようと、のど自慢で知り合いになったピアニストの木原に抜け目なく近づいた。浩一は、光枝のためにジャズ喫茶と契約し、光枝をそこで唄わせた。光枝の体当たり的な演出はいよいよ人気を加えていった。光枝の烈しい性格とはおよそ対照的におとなしい弟の茂夫は、矢島組と白龍組の対立に巻き込まれその乱闘の末、逃げ遅れて鑑別所へ送られてしまった。世の中すべてを向かうに回してて闘っているような光枝だが、弟に対しては驚くばかりの愛情を注ぐ彼女である。光枝は警察に食い下がって茂夫を貰い下げた。ジャズ喫茶に広がる光枝の人気に目をつけた矢島組の社長で芸能ブローカーも兼ねる沼沢は、一儲けを企んで浩一から光枝を離し、自らマネージャーになろうと契約書を提示した。光枝は、浩一と沼沢を比べながら、芸能界に顔の広い沼沢を利用しておこうと契約書に調印する。沼沢は、光枝の体にも野心を持っていたが、光枝はその危機を弟の茂夫を使って巧みに逃れていた。
折も折、光枝の野望である舞台出演のチャンスが訪れた。沼沢の手腕で太陽レコードへの契約が実現しそうになったのである。だが、光枝の貪欲な生き方を憎み、その出世を妬むずべ公仲間の春恵、サキ、みどりたちは、光枝を待ち伏せてリンチを浴びせ、その髪をずたずたに切ってしまった。だがそんなことでへたばる光枝ではない。髪を短くカットして現れた光枝の姿は太陽レコード関係者を喜ばせ、待望の舞台出演が決定した。こうした時、茂夫を親身になって面倒を見る青年・坂田の殺害事件が起きた。坂田は会社の宿直中に強盗に殺されたのである。狂熱のステージに唄う光枝を訪ねて突然浩一が現れた。浩一は光枝の前に大枚の札束を投げ出すとハワイへ行こうと真剣な表情で詰めよった。光枝のリサイタルを自分の手で開こうとその資金を作るために、西山精機工場へ忍び入り、発見した坂田を殺害、血に染まった金を掴んで逃亡したのである。札束を挟んで対する光枝と浩一。そこへ沼沢はじめ乾分たちが雪崩れ込んだ。彼らは浩一が光枝を引き抜きに来たものと早合点して浩一を襲う。のけぞる浩一めがけて一味のナイフが飛んだ。必死になって浩一をかばおうと間に入った光枝は、顔面にそのナイフを浴びて絶叫して倒れた。同時に警察が踏み込んできた。騒音の真昼、ネッカチーフで顔の傷を隠した光枝が茂夫と並んで仲良く靴を磨いていた。あれから幾日過ぎたのだろうか?街は相も変わらず騒がしく派手な姿の若者たちが眼の前を行く。「いつまでも、こんな靴磨きなんかしているもんか!」光枝は雑踏の中に不敵なつぶやきを投げつけていた。