1960(昭和35年)/11/9公開 73分 モノクロ シネマスコープ 映倫番号:11960
配給:東映 製作:東映
松方弘樹×宮園純子コンビの第四作。歌手にも拳闘選手にもなり損ねた若者・新次が、悪の手先に使われた挙句に殺された恋人の真相を突き止める目的を持つ娘・みどりに惹かれる。やがてその娘の恋人が自分の兄であることを知った新次は、憤然としてみどりとともに兄の仇である悪と対決する。
横浜のキャバレー「銀の城」のダンサーみどりには密かな目的があった。一年程前、平凡な会社員であった恋人が、銀の城の社長に魅入られて悪の道へ踏み込み、揚句に行方不明になった。死体こそ発見されていないが、恋人が抹殺された事を確信するみどりは、その証拠を掴むべく潜入しているのであった。銀の城では社長の原口とマネージャーの望月とが事ある毎に張り合っていたが、その争いは美しいみどりを巡って次第に激しくなっていった。執拗に言い寄る望月のために危機に立つみどりを、ふらっと銀の城に入り込んで来て助けてくれた青年。新次というその若い男もかつて危ないところをみどりに救われていた。望月が邪魔になった原口は、腕っ節に惚れて歌手として雇った新次をマネージャーの後釜に考えて、望月抹殺を企てた。すり変えられた品物で、取引に望んだ望月は、それが発覚して取引相手に袋叩きに遇うが、この原口の計略を潔しとしない新次に助けられる。傷ついた身をみどりのアパートに寄せた望月は原口を倒すための協力をみどりに約束させ、何処かへ姿を隠した。恋人の敵を討つために潜り込んだと語るみどりの言葉に、新次は一層みどりに惹かれるが、一風変わった新次にみどりもまた心惹かれる様になっていた。ふとした事からみどりの恋人が実は兄の圭一であった事を知った新次は愕然とする。そして今は亡き人への想いを断って、新しい自分になると新次に抱き寄るみどりに、総べてはその人の仇を討ってからだと諭すのだった。みどりはやがて、新次が亡き圭一の弟であることを知った。運命の巡り合せに涙ぐむみどりと新次、そうした二人の会話を暗がりの中で原口が聞いていた。東京の「竜馬会」から原口のもとへ一葉の写真の照合があった。紛れもなく新次の顔であった。かつて竜馬会の一員であった新次は、一年前のミドル級タイトルマッチで挑戦者の陣野を強迫して負ける事を約束させていた竜馬会を裏切り、陣野を激励して勝利を得させ、激しいリンチに遇ったが、会場の売り子であったみどりに逃げ口を誘導されて逃避して以来、彼らに追われていたのだった。新次の姿を見てはやる竜馬会に原口はチャンスが来るのを待つように伝えるのだった。銀の城の地下室では三国軍人との取引が行われていた。緊張の時間が過ぎ、両者に笑顔が湧いた一瞬、新次の手に拳銃が握られた。一同が声を呑んだ瞬間、新次の脇腹に望月の拳銃が当てられる。勝ち誇って原口を追い詰めた望月もみどりの気転で、原口ともども復讐に燃える新次の銃口の前に立たされた。その時、拳銃を凝して押し入って来たのは、竜馬会の一員であった。闇の中で拳銃戦が展開し、乱闘の中で復縁した原口と望月は、みどりを浚うと車で逃げ出した。竜馬会から奪ったオープンカーで必死に追跡する新次は、切り立つ断崖の道で原口の車を追い越して停まった。だが新次の拳銃には一発の弾丸しか残っていなかった。鋭い殺気の中に三発の銃声が同時に鳴った。望月の拳銃を弾き飛ばした新次も、原口の一弾を肩に受けオープンカーの中に倒れこんだ。夢中で駆け寄ったみどりは、失神する新次の胸へ泣き伏した。頷き合った原口と望月は、新次のオープンカーを崖から落とそうと計る。一瞬目ざめた新次が、みどりの体を抱いて車の外へ飛び出た。激しく衝突した車と車のバンパーが噛みあったと見る間に、原口と望月の絶叫を残して二台の車は断崖にすべり落ちていった。やがて茫然と抱き合う新次とみどりの姿を闇の中でくっきり浮かばせてパトカーのライトが大きく近づいてきた…。