作品検索

特ダネ三十時間　曲り角の女

1960（昭和35年）/11/22公開　59分　モノクロ　シネマスコープ　映倫番号：11997　
配給：東映　製作：東映

帰省帰りの熱血記者が偶然掴んだ凄い特ダネ。車中美人女子大生殺人事件をめぐり、現代女性の逞しい処世術に悩まされながら展開する痛快無類な真犯人探し特ダネ合戦。

ストーリー

暗闇の中を轟然と突ッ走る夜行列車。その車内で清水浩平はまどろんでいた。つと、隣席の娘が化粧室へ立った後、もたれて来た浩平の頭は窓っぷちにイヤという程ぶつかった。その浩平の寝ぼけ眼を、突如として起った女の悲鳴が、爛々たる職業意識に変えさせた。翌朝、「美貌の女子大生殺さる、上京中の夜行列車に怪事件」と、昨夜の事件を社会面いっぱいに報ずる日本新聞。久々の特ダネに社会部面々の表情も晴れやかである。被害者は絞殺され、犯人はおそらく驀進する列車から飛び降りたものと見られた。デスクの谷村を囲んでの綿密な作戦の後、浩平は極東大学に被害者の友人･川原トシ子を訪ねた。彼女は昨夜、浩平の隣席に座っていた娘である。だがトシ子は被害者に関する情報を故意に話さない。懸命に食いつく浩平の周囲に現れた学生たち、いずれも被害者と親しかった英子、由紀、そして在学八年という香取学。その浩平の眼に、遠く学生たちに取り囲まれて覗いている一人の男の姿があった。それは私服の刑事と間違えられたライバル毎朝新聞の大木記者だった。持ち前の粘りにモノを言わせて浩平の活動が始まった。何としてもまず、被害者の周辺を明らかにしなければならない。被害者をよく知る川原トシ子を、下宿に自動車教習所にと追う浩平。だがトシ子は頑強に口をつぐんだままである。一方、捜査本部が重要参考人を呼んだとのニュースに、警視庁内の七社会はどよめいた。たが、各社記者の必死の尾行も、老練刑事たちの巧みな戦術にあってまんまと失敗。
折も折、日本新聞社へ殺人現場を目撃したという男から電話があった。山谷のドヤにいるという男を息せき切って訪ねた浩平だが、これも飲み代を稼ぐための作り話だった。その浩平を更にくさらせたのは、銀座のバーからの覚えのない請求書。それが香取学の仕業と知るとさすがの浩平も思わずウナった。カンカンに怒った浩平に問い詰められた香取は、意外な事実を提供してくれた。被害者が柳田五郎という学生と同棲していたというのである。そして更に、川原トシ子がアルサロに勤めていると知った浩平はその勤め先へ日参した。浩平の粘りに遂に顔負けしたトシ子は、被害者について語ると共に、柳田のもとへ浩平を案内した。奇妙な小男を伴う長身の柳田、それは紛れもなく重要参考人として捜査本部に呼ばれた男だった。柳田の口から、被害者に愛人が出来たため三ヶ月前に別れたと聞いた浩平は、その相手という西山を訪ねる。だが自動車教習所に勤める西山は純情そうな好青年、犯罪の匂いは全く感じられなかった。かくて被害者から高額な慰謝料を請求されていたという柳田に当局の捜査範囲も絞られてきたかのよう。日本新聞の取材方針もまたその線に決められた。折しも、トシ子を誘って柳田のアパートへ様子を探りに行った浩平は、柳田が旅行鞄を下げて車をスタートさせる姿を見い出した。その車が東京駅に着くのを見きわめて、勇躍デスクへ電話を入れる浩平。だが浩平からの電話の直後、七社会に頑張る井上記者からの声が、ただならない毎朝新聞の動向を伝えて来た。どうも犯人は柳田ではない、見当違いらしいというのである…。毎朝新聞の大木、どうやら彼が特ダネを押えたらしい。殺人者は誰だろう？浩平は烈しく唇を噛んだ…。