1961(昭和36年)/2/21公開 61分 モノクロ シネマスコープ 映倫番号:12147
配給:東映 製作:東映
東洋一の空の玄関・羽田空港を根城に、国際的ギャング団によるパイロット誘拐事件が続発。敢然とこの兇悪犯に挑む命知らずの青年刑事と、男勝りの女トップ屋が大暴れ。
羽田空港を拠点としてパイロット逃避事件が頻発していた。日本人パイロットが密出国し、海外で空軍将校になっている事実がある。かつて少年航空兵だった加下は、課長の指名でこの事件を追う。「週刊ニッポン」の社長服部道夫の妹で、男まさりの特ダネ記者美智子も、先頃、胴体着陸を敢行し話題になった名パイロットを追った。だがパイロット病院には彼の姿はなかった。付き添った看護婦川添良子は、そのパイロットはすでに退院したという。この事件に大乗り気の美智子は、加下を不良パイロットのたまり場バー水藻に案内する。加下はここで、ペイ中の女貞子と知り合う。女は加下だけを「青いランプの家」に誘った。そこには異様な享楽の光景が拡がっていた。裸の女たちがさんざめく中に、数人のパイロットたちが酒を浴びていた。加下は亀という男に導かれるまま更に奥へ。そこでは五千円から上は五万円までの金で女が買える。五万円の女、それは香港の歌姫紅小美だった。加下は香港にいた頃、彼女の舞台を見たことがある。正体を見破られガク然とする紅。この場を盗み見ていた男山形は、加下を苦々しく見送った。加下は続けてこのクラブに入りびたり、ドラムを叩く傍ら、自分は優秀なパイロットだと吹聴した。その加下を山形が岩壁に誘い出した。加下は山形の一撃で昏倒、更に加下を追ってきた美智子も、山形に殴られ失神した。
パイロット病院、加下は意識を取り戻したとき、美しい看護婦川添良子に見守られていた。だが、直ちに加下は警察へ出頭命令。そこには美智子が収容されていたのだ。加下は意地悪半分に、こんな女は知らないと小杉警部に訴えて美智子をカンカンに怒らせた。この時見ちがえるばかりの豪勢な支那服を着た川添良子が、加下の身許引受人として現れたのだ。これには何かある……。加下の思わく通り事件が進んでゆきそうだ。良子は、今夜八時、蒲田駅前の西海を約して、あたふたと大和田ビルに消えていった。このビルの所有者は大和田伝蔵といい、彼は上海や香港で阿片の密売をやっていた中国人であることなど、所轄の小杉警部の報告で、加下は知った。
駅前八時、加下は良子にぞっこん惚れこんだ様子を示して、彼女に大サービス。すっかり加下に心をゆるした両虎は、加下がくさいと睨んでいた紅と山形と大和田の関係、又山形は、自分の夫でありながら、紅と情事に沈んでいることなど、暗示的なことをしゃべった。この時、二人の様子を大和田、山形、亀らがさぐっていた。愈々事件の核心に近づいた。加下は捜査課長に連絡をとり、飛行時間三千時間というふれ込みの前歴書類の制作を依頼、偽名には、「週刊ニッポン」の社長服部道男の名をチャッカリ拝借した。又、加下は服部に、今夜中、編集部で美智子を待機させるように言った。そして大和田一味の根氏と「青いランプの家」に再び潜り込んでいった。優秀パイロットという加下のふれ込みは功を奏した。大和田は、加下を五千万円で売り飛ばそうと、良子の監視づきで彼を監禁した。だが、加下が妹に電話するといって美智子の許にダイアルを廻したのが失策、その電話番号から加下の正体が一味にバレてしまった。万事休す。加下は別の部屋に閉じこめられた。意外、そこには胴体着陸の名パイロット斉藤が監禁されていた。大和田は香港から紅小美を誘拐、彼女にパイロット達を誘拐させては、彼等を海外に売り飛ばしていたのだ。
加下の正体が刑事だと知っても、恋を断ち切れぬ良子は加下の危機を美智子に知らせた。この良子の胸に大和田の銃弾が貫いた。
一方、張り込み中の刑事たちは、大和田ビルを一斉に襲った。だがそこにはもぬけのカラ、一刻早く大和田は紅と共に、空港に駈けつけていた。
その頃、不気味な洋裁に連れだされた加下とパイロットは、山形の虚をついて、彼の拳銃を奪った。激斗が展開された。次々に一味が加下の手錠につながれた時、すでに夜が明けていた。
羽田空港――紅小美を伴い、高飛び寸前の大和田は、待機していた加下刑事達によって、遂に逮捕された。美智子も特ダネを得て大張切り。そのカメラに大和田一味の最後のあがきが次々と写されていった。
「赤い影の男」シリーズ(2)