1961(昭和36年)/3/5公開 81分 カラー シネマスコープ 映倫番号:12194
配給:東映 製作:東映
浪人巷に溢れる享保年間。相次ぐ老中殺人事件の裏に天下覆滅の陰謀を嗅ぎつけた暴れん坊旗本・宝大吉が、剣と知力と胆力に全てを賭けて荒れ狂う痛快味満点の時代劇。
浪人巷にあふれる享保元年――。
月番老中、堀田甲斐守が下城の途中、何者とも知れぬ刺客の一団に惨殺された。城中では、ただちに重臣会議が開かれ、以後重臣の身辺に護衛が配置されるという非常体勢が布かれたが、この時期に当たって、上様お声掛の旗本宝大吉の登用が計られた。
この頃、当の宝大吉は、堅物の用人可内に財布の紐をしめられ、質屋ののれんをくぐるという気ままな浪人暮らし、しかも質草が自分のうで一本というのだから、大吉にぞっこんの女主人お柳もあきれ顔だ。折から大吉の叔父対馬守が仕官をすすめに来るが、大吉はこれを柳に風と受け流す。大吉のこの公儀嫌いは、時の若年寄駿河守の妹、文との恋の痛手に根ざしていたのだ。駿河守は、大吉と文の恋仲をきき、自分の出世のために文を大老家に嫁入らせ、若年寄の座についた……それ以来大吉は、縁戚の力で左右される公儀のあり方に不信の念を抱いたのだ。そして文は、間もなく夫に死なれ、いまは実家である駿河守の屋敷に帰っていた。
一方、大吉は仕官を断ったものの、密かに、米問屋越後屋と時の勘定奉行備前守の不正な結びつきを探っていた。大吉の手足となって働くのは豪商但馬屋の息子安太郎だ。安太郎にとって、大吉親分は恋人お千代との粋な縁結びの恩人なのだ。安太郎の報告を聞いた大吉は、単身越前屋に乗り込み、不正対する挑戦の言葉を投げつけた。この大吉の動きにつられ、備前守らは、刺客四方田鉄斉をさし向けて、その暗殺を計った。大吉、鉄斉は雷雨の中で死斗を展開するが、その場に突然落雷、焼跡には大吉の愛刀来国俊が残されていた。そしてまた、山王祭の混雑にまぎれて、将軍の面前で、大吉の叔父対馬守が暗殺された。かつての恋人、文のなげきのなかで、大吉の通夜が行われている頃、備前守の門前に一挺の駕籠が到着する。迎える備前守の前に、すっくと駕籠の中から立ち上がったのは、四方田ならぬ大吉だったのだ。大吉はさらにこの備前守のふともらした一言から、事件の黒幕が、文の兄駿河守であることを知った。駿河守は、越前屋と備前守をあやつって軍用金を集め、浪人群を集めて将軍家覆滅の大陰謀を進めていたのだ。駿河守邸に乗り込んだ大吉の元気な姿に喜んだのも束の間、文はその大吉の口から兄駿河守の陰謀を聞き苦悩にうちひしがれるのだった。陰謀を見破られたと知った駿河守は、文をおとりに大吉の心を動かし、密かに暗殺しようと狙い、品川沖には、駿河守の買い集めた莫大な武器弾薬が到着する。大吉は、初恋の人、文の苦悩を振りきり、駿河守一派の大陰謀に対して、愛刀来国俊と共に決然と立ち上がった。