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べっぴんさんに気をつけろ　

1961（昭和36年）/5/17公開　59分　モノクロ　シネマスコープ　映倫番号：12242　
配給：東映　製作：東映

大きな眼、大きなロ。独特の風貌をした喜劇界の人気者石井均の映画初出演作品。天衣無縫の九州男児が、青雲の志を立てて上京し、キャバレーのドア・ボーイの職にありつき、現代世相の裏表をいやという程見せられ、あげくの果ては殺人犯にまつり上げられそうになるという失敗の連続を爆笑の中に描く。配役は天衣無縫の九州男児、百江均二に石井均、その相棒の倉田六道に石井均一座の戸塚睦夫、キャバレーの女給、朱美に久保菜穂子、チャ子に山東昭子、みどりに光岡早苗、令子に横河由里、キャバレーの悪徳支配人古市に大村文武、放蕩者の元貴族紫小路式部に今井俊二、均一の下宿先の娘良子に小宮光江加えて清川虹子が出演している。

ストーリー

百江均一といってもデパート特売の100円均一ではない。ヒヤクエキンイチと読むレッキとした人名である。さて、この九州男児、青雲の志を抱き、裸一貫ならぬトランクにリュック、傘一本引っ下げて都会へ上京、だが職のあても、住居のあてもない。東京駅へ、降り立った均一は、まず手っ取り早くお巡りさんにすがりついた。すがりつかれた山岡老巡査こそ迷惑千万、この得体の知れない山出し青年の押しとネバリにとうとう屈服、住居の一部屋を提供することとなってしまった。山岡家に居候した均一は、そこから職業安定所に日参、キャバレー「ダイヤモンド」のドアボーイという職にありついた。
出勤第一日目、均一は同僚の倉田から、すべからく女給達のヒモになるべしと吹き込まれた。マネージャーの古市などは、要領のいい男で売れっ子娘二、三人のヒモになっており、その稼ぎを全て手中に握っているのである。ヒモになるには、まず女性にもてなければならない。均一と倉田は、センスを身につけるべくチャームスクールヘとくり込んだ。しかし一日や二日で彼等に磨きがかかる筈がない。均一と倉田は、相も変らぬ「イラッシャイマセ」「アリガターシタ」のドアボーイ、ヒモの一人も掴めない状態である。
ところが思わぬ幸運が二人に舞い込んだ。ショーの穴うめにと特別出演した均一と倉田の珍芸が大変な受けようで、女給達は、二人を見直したのである。そして均一にはチャ子とみどり、倉田には令子がモーションをかけてきた。ところがチャ子にはレッキとしたヒモがあり、均一をキャバレーの客紫小路とのゴルフ遊びに誘い、キャディの代用に利用しようとし、みどりは、みどりで、均一を客の借金取り立てに小使のように追い廻した。又令子は、倉田を麻薬運搬入に使う心算だったのである。均一は、山ほどのクラブを抱えてフラフラ、借金取り立てに油汗をかき、倉田は、麻薬運搬入を断ったため、惨々愚運隊に痛めつけられるという体たらく、所詮二人にはヒモの資格が無かったわけである。意気鎖沈の均一を母性的愛情で慰めたのは、「ダイヤモンド」のナンバーワン朱美である。彼は誘われるままに朱美のアパートを訪れた。そこで出されたブランデーを呑み干した均一は、忽ち睡魔に襲われ正体もなく寝込んでしまった。ブランデーには睡眠薬が入れてあったのだ。朱美は、均一の後からやって来たマネージャーの古市も同じ方法で眠らせた。そして忍んでいた情夫の菊山と力を合せ、古市の首を繩でしめ、その繩の端を均一に握らせ殺人現場を作り上げたのである。朱美は、ヒモの古市のあくどい仕打から逃れようとしていたが、そのダニのような魔手から逃れられないと知り、菊山としめし合せて殺人の兇行を演じ、その罪を均一になすりつけようとしたのだ。眠りからさめた均一は、刑事に追捕され留置所へ放り込まれた。しかし幸運にも、古市が息を吹き返したため、真犯人は朱美と菊山であることが判り、二人は、間もなく刑事達に追捕された。この事件で、山岡巡査は均一にすっかり手をやかされたが、彼の飾り気のない性質にすっかり惚れ込み、娘の良子を嫁にと願った。良子の美しいまごころは、均一を充分幸福にするに違いない。今日は均一の再出発の日だ。あぶなっかしい格好で自転車をあやつり、ソバ屋の出前をすする均一の肩に、あたたかい陽ざしが輝いていた。