1958(昭和33年)/9/7公開
配給:松竹 製作:松竹株式会社
週刊大衆に連載中の大下宇陀児原作の映画化で、麻薬中毒の自殺常習者をめぐる宝石横領の完全犯罪を描いたもの。脚色は高橋治、監督は堀内真直、撮影を小原治夫が担当。出演は田村高廣・渡辺文雄・有沢正子、高千穂ひづる・泉京子など。
気の弱い麻薬中毒者・四宮四郎は厭世的な自殺常習者である。恋人ユキは美容院に勤めている。彼女がとめるのを振り切って、何度目かの自殺を図ったが、塩田宝石店の社長の娘・恭子とその婚約者信吉が来合わせ救われた。彼女の好意で店の運転手になったが、宝石店の社長秘書・村越は情婦の女店員・秋子にそそのかされ、自殺常習者の四郎を利用して宝石横領を計画した。社員の山倉の弱みを握り、彼を脅迫して、四郎を消させようとしたが、気の弱い山倉は四郎に自殺を売ってくれと頼んだのである。一年間東京にいなければ五十万円。ちょうどユキがT市の美容院の売物を欲しがっていた。彼は承諾し、ユキと共にT市に移った。村越らは四郎が死んだと信じ、第二の計画にとりかかった。山倉に金庫から宝石を盗み出させ、途中で山倉を殺した。彼に四郎の服を着せ、偽造の四郎の遺書を添え、線路に捨てた。自殺は遺書から中毒のことと、社長令嬢と特別の関係になったのが原因と推定された。社長令嬢云々の一件は、村越が恭子と信吉の仲をさき、店の養子になろうというのである。四郎は麻薬が切れ、東京へ出てきた。弟分のオノロケの黒田から、お前は死んだときかされ、驚く。てっきり山倉がやったと思い、彼は友人の記者・安原を訪ね、事件のいきさつを話した。安原の同僚・坂井はそれを調べ始めた。四郎のことをきいて、村越は驚き、オノロケを買収して四郎を襲わせた。