1959(昭和34年)/12/22公開
配給:松竹 製作:松竹株式会社
富田義朗の脚本を大野徹郎が監督した、三橋美智也の歌謡もの。撮影は井上晴二が担当している。
小さな湖畔の町に祭をあてこんで流れこんで来た女剣劇一座があった。一座の民謡歌手三浦竜夫にとってこの町は故郷であった。竜夫は花形歌手花村ひろ子を愛していたが、ひろ子の愛しているのはヴァイオリンひき有田徹二だった。芝居小屋は満員の盛況だった。座長の浅井不二子と二枚目藤山信弥の人気は特に高かった。演出家であり不二子の夫である清水が興行元大石に挨拶にゆくと、大石はその夜清水、不二子、それに一座の女優浅井静子の三人を招待した。竜夫は病気で倒れたひろ子を宿の女中節子に頼んだものの、ひろ子のことが頭を離れなかった。その頃酔った清水の目を逃れて、不二子と信弥はひそかに会っていた。翌日、二人は一座の金を持って駆け落ちした。清水も東京へ逃げ帰った。竜夫・有田・病床のひろ子達八人の座員は旅費も宿賃もなくて水を飲んでくらした。竜夫は町で節子に会った。ひろ子を愛しながら一言も言えない竜夫が節子にはじれったかった。大石組が一座に吉報をもってきた。穴埋めの浪曲一座が不入りのため、竜夫に歌手として特別出演してくれというのであった。報酬は宿代、旅費であるときいて、一座のものは尻込みする竜夫を励ました。竜夫の歌は大成功だった。ひろ子と有田は結婚して郷里に帰ることになった。ひろ子は竜夫の好きな古城の譜を贈った。月日が流れ、竜夫の第一回公演が大劇場で開かれた。“古城”を歌う竜夫の、そして客席のひろ子、有田、節子らの眼に過ぎ去った日をしのぶ涙が光っていた。