1967(昭和42年)/9/30公開
配給:松竹(受託配給) 製作:表現社
水上勉の同名小説を鈴木尚之が脚色し、篠田正浩が監督した文芸もので、独立プロ表現社の第一回作品。撮影は小杉正雄が担当している。
昭和12年頃の石川県輪島。まつのは、病身の父と貧しい家計を助けるため、商人宿の女中に出た。ある日、狐独なまつのの相談相手となっている女給の律子が、景気のいい山代温泉へ行こうと彼女を誘った。まつのは迷ったが、ちょうど缶詰会社の外交員の小杉を知り、彼が山代で働き口を見つけてくれたことから、山代行きを決心した。山代に向う列車の中で、まつのは燃える西空にあかね雲を見た。温泉町に着いたまつのは、律子の心配をよそに、小杉を信用して仲居になったが、化粧をして見違えるほど美しくなった彼女は、たちまち酒席の人気者になった。大陸での戦線は拡大する一方で、南京陥落の報が伝わってくるころ、まつのにも水商売の女がたどる運命が待っていた。小杉が世話になっているという中年の久能川が最初の男だった。それは小杉が勧めたことで、まつのは小杉と寝るのだったら嫌ではなかったのだが、久能川がくれる100円が欲しかったのだ。その心のうちを聞いた小杉は、あてどもなく町をさまよった。その日も、西空には絵の具をとかしたようなあかね雲が浮んでいた。そのいきさつを知った律子は、自分は娼婦のような生活をしていても、まつのにはそんなことをさせたくないと思い、まつのを叱り、小杉を罵倒した。しかし、まつのは彼を悪人とは、どうしても思えなかった。彼女は金沢の小杉の下宿を訪ねた。二人はいつか堅く抱きあったが、小杉は何故かまつのを振り払った。山代に戻ったまつのは憲兵少尉・猪股の訪問を受け、その時初めて小杉が脱走兵であることを知った・・・。
毎日映画コンクール女優主演賞(岩下志麻):キネマ旬報賞主演女優賞(岩下志麻)