1954(昭和29年)/4/7公開 122分 モノクロ スタンダード 映倫番号:1197
配給:東映 製作:東映
日本の女流作家の第一人者・林芙美子の最高傑作を映画化。赤貧に喘ぐ女主人公の流転の姿を追い、人間の心を厳しく見つめた感動作。
他国者に嫁いで故郷を追われ、行商人となった母を持つふみ子にとって、旅そのものが故郷であり、各地を転々とする生活は幼心に流れ者の悲哀を刻む一方で、逞しい向上心も培っていった。大正から昭和に変わる頃、上京して初恋に敗れ、失意と赤貧の身を大都会の渦に投げ入れた時から、ふみ子の灰色の放浪記が綴り始められる。近眼で学歴もない彼女は女中奉公や下着売りの露天など、職を転々としても常に貧乏が付きまとっていた。セルロイド工場の女工となっても、忽ち過重労働で病に伏してしまった。同じ下宿に住む苦学生の松田から親身の看病を受けても、一度男に裏切られたふみ子の心は彼に感謝することができない。看護の手から逃れるため、彼女は病を押して母のいる尾道へと旅立つ。だがそこでも貧乏から逃れられず、ふみ子は自分を捨てた吉村のもとを訪ねて結婚を申し出てみたものの、貧乏ゆえ吉村は冷たい態度であしらうのだった。大阪道頓堀のカフェの片隅で絶望の詩を書きなぐるふみ子。その詩を一人の客が愛情をもって認めてくれた。彼は劇団芸術座の俳優・中島文吾。やがて二人は東京で貧しい愛の生活を始めるが、文吾は一座と共に地方巡りに旅立ち、ふみ子はカフェの女給商売を続けなければならなかった。だけど今は文吾という心の支えがいる。働きながら詩を学び、やがて彼女の詩が雑誌に載った。賞金を手にした彼女は中島の巡業先を訪ねるのだが…。