1958(昭和33年)/11/5公開 60分 モノクロ シネマスコープ 映倫番号:10859
配給:東映 製作:東映
暗い上流家庭に育った一少年が、社会悪の矛盾に激しく抵抗しながら、閉ざされた心に清らかな愛情を捜し求める、唄と鉄拳のアクションドラマの傑作。
十三年ぶりに母が日本に帰ってきた。新吉は華やかに横浜に降り立つ母を見て、激しい憤りとそれにも増す不潔感を覚えた。母の美奈子は父信三の無理解から金玉成と共に日本を去っていった。母のいない寂しさを姉美奈子の愛情で紛らわせてきた信吉は、いつしかゆがんだ性格に育ち、学校さえも追われるような無軌道な生活を送っていた。貸しボート屋の娘幸子の唇を強引に奪ったり常軌を逸した信吉の行動が荒々しく巻き起こった。幸子の兄修一は、信吉との交際を案じて妹を責めるが、幸子もまた信吉を深く愛していたのである。一方、修一は或る秘密に悩んでいた。修一は税関に勤めていたが、信吉の父信三の密輸の鍵を握っていた。修一は信三の手下であったのだ。信三が経営する津村貿易では、修一の父福冶が密輸をだしに信三をゆすっていた。麻薬患者である福冶は、その足でバー「紅龍」の地下にある阿片窟に向かったがそこには金玉成が輩下を待ち伏せしてあった。キャバレー「白蘭」では金玉成夫妻と信三、美奈子が居並び、その四人の様子を燃えるような目で信吉が見つめていた。昔は自分の妻でありながら、今は金玉成夫人となって微笑する女の魔性が信三の胸をついた。だが、取引がある。その父の姿を見て信吉の若い怒りは爆発した。「父さんの馬鹿!」言いざま信三に一撃を与えるが、手もなく信吉は金玉成の輩下に連れ出されてしまう・・・