1960(昭和35年)/2/3公開 86分 カラー シネマスコープ 映倫番号:11550
配給:東映 製作:東映
恋に仇討に軽快なテンポで千変万化、波瀾に満ちたご存じ“槍の権三”の青春時代を痛快に描く。東千代之介の颯爽とした槍さばきも鮮やかな興趣編。
六年ぶりに叔父の権太夫の家に帰って来た若侍・笹野権三郎。
はるばる九州におもむき、槍の名人・高田又兵衛の門をたたき、宝藏院流の奥儀はもちろん、刀、馬術、弓矢、鉄砲、薙刀、柔術と武芸百般を究めた腕前は素晴らしく、紀州藩主・紀伊大納言頼宣の御前試合で悪家老・柳沼美濃の権勢を笠にきる羽織組の用心棒・種田五郎左衛門を相手に空席の槍術指南役を勝ち得たが、羽織組の怨みと権三郎に想いを寄せる権太夫の娘・雪乃に横恋慕する美濃の息子・彦太郎の妬みを買って大乱闘を演じる破目となり、それが科で藩を離れることとなってしまった。
時は流れ、権三郎は、ふとしたことから江戸の侠客・楯の富吉の世話になり、おきゃんな富吉の妹・お里にも慕われながら、羽振りを利かせて悪業の限りをつくす武家政こと侠客政五郎一家に敢然と挑んで槍の笹野の名をあげていた。
善良な富吉一家の乾分にも慕われ、酒をくみ、浅草を散策する折々にも、ふと想い浮かべるのは和歌山の叔父権太夫と雪乃の姿である。
だが、その二人の姿は既に和歌山にはなかった。権三郎が江戸に発ってしばらく、権三郎に代り槍指南をつとめる高田又兵衛を供に出府した紀伊頼宣の留守を幸いと、勢いにまかせた柳沼彦太郎と羽織組によって権太夫は暗殺され、炎上する我が家を後に雪乃は江戸に逃げ、執拗に後を追う彦太郎と羽織組も江戸の武家政一家に転り込んでいた。
とは露知らぬ権三郎は、富吉の乾分に案内されて一日花の吉原に遊び、偶然にも雪乃に邂逅する。口入屋に騙され遊女に売られて客をとらされようとしていたいきさつにはじまり、権太夫の死にいたるまで、留守中の一切を雪乃から聞いた権三郎の胸に復讐の炎が激しく燃え上がった。
紀州藩江戸屋敷に伺候した権三郎は、頼宣に権太夫の仇討ちを誓い、大身の槍を戴いて師又兵衛の励ましを受け、目指す浅草本通り武家政一家に突ッ走る。雪乃は後を追い、紀州屋敷の又兵衛までもが助勢に駆けつける。
待ちかまえた武家政一家は百人余り。彦太郎と羽織組も一斉に、富吉の娘・お里を囮に刀を抜く。
だが、富吉一家の助勢を受けた権三郎は師又兵衛直伝の宝蔵院流奥伝の槍を駆使して太活躍、雪乃もまた、懐剣の鞘をはらって目出度く権太夫の仇を討ったのである。時に馬蹄の響――自から馬を馳せた頼宣が権三郎、雪乃に仇討免許状を投げつけた。
感泣、平伏する二人の頭上で富吉一家の手が鳴り渡った…。