1960(昭和35年)/3/1公開 83分 カラー シネマスコープ 映倫番号:11624
配給:東映 製作:東映
美空ひばりが、意地と度胸は日本一の江戸っ子藝者・小花に扮し、素敵な唄、見事な踊り、夢のような恋をたっぷりと披露!高倉健との豪華競演で贈る青春明朗篇。
器量と度胸は柳橋随一と謳われる富喜乃家の小花という芸者、昔は柳橋の有名な待合「春日」の孫娘であった。だが今では昔の華かな夢はどこえやら、母のすみは三味線の師匠で小さな天ぷら屋「花惠」を経営しているが、それも叔母のまきに委せていた。
ところが、勝ち気な叔母のまきは、昔の「春日」の店を再建しようと「花惠」を担保に入れて、「春日」の跡である料亭「喜楽」買収を夢みていた。小花は絶対反対、金融業の風間が来ても啖呵を浴びせて追い帰していた。
夜の柳橋、三味の音が流れ、芸者衆の往来も派手、こんな時間には売れッ子小花は引ッ張り凧で、料亭「一楽」でもお馴染みの大島弁護士が小花の来るのを待っていた。大島は小花の小唄が好きだった。その大島が帰る際、ひょんな事から一台の自動車獲得を争った小花と一人の青年、仲々の好男子ながら意地の強さは小花と較べてヒケをとらない頑固さ、その名は二宮卓也、職業はテレビ技師ということだった。
その翌日、「一楽」の女将・杉が娘の千沙子を連れて小花の家を訪れた。杉は昔「春日」で下働きをしていたという女。小花の母すみに「喜楽」を買うから雇われ女将にならないかと、無礼きわまる物腰だ。短気なまき、母想いの小花までが横から乗り出して杉を攻撃、「喜楽」は小花が買い取ります…と、大きな啖呵を切ってしまった。癇癪を起した小花は家を飛び出し、妹芸者の小福に誘われるままオリエント電機のテレビエ場を見学したところ、そこには偶然にも「一楽」で争ったテレビ技師の二宮卓也がいた。昨日の喧嘩はどこえやら、小花と卓也はこみあげる微笑の中に立っていた。
さて、ここに一つの事件が待ち伏せていた。オリエント電機社長の椅子を狙う専務の曾我部が関西財閥の岩井と提携し、腹臣の小倉を使って小花を利用。返済の目算もない卓也に一ヶ月の期日で五百万円の融資を計った。卓也は思いも寄らぬ大金を得て会社の危急を救わんとする。
その夜、小花と卓也は銀座のバー“エリーゼ”で気勢を上げて痛飲した。だが、「一楽」の娘・千沙子も卓也に恋する一人、ウイスキーをはさんで三角関係が出来上り、破れかぶれで酩酊した卓也は、小花の引き止めるのも聞かず、伊東で静養する社長に融資の報告をしようと、千沙子の車で立ち去った。負けるもンかい…とばかり小花もまた卓也の忘れた背広を持って一路伊東へ!いつの間にやら小花にとって卓也は忘れられない人となっていた。伊東の高原で二人はお互いの胸の中にある恋を認めたのだった。
帰京後、卓也は、社長の重松から、五百万円の融資に関する疑惑を聞かされ、急拠、岩井の腹臣小倉を探した。千沙子が何かとこれに協力し、おさまらないのは小花である。折も折、「一楽」の女将・杉への意地も手伝って、「喜楽」再建の話がまたまた再燃。小花は母や叔母にも啖呵を切って家を飛び出すと小福のアパートヘと身を寄せた。そこで小花は、小福の恋人・石川に対する優しい女心にふれ、ふと我が身の鉄火をふり返ってみるのだった。更にまた小福は重大なニュースを持っていた。それによれば、例の五百万円は、オリエント電機乗っ取りの陰謀費であるという。びっくり仰天の小花は、卓也の危機を救うべく、すべてを大島弁護士に打ち明けた。
明くれば、柳橋一帯、吉例踊りの温習会、舞う手も厳しく「お七」の人形ぶりをみせる小花の至芸、だがこの間にも、曾我部の悪事は広がっていった。
九分九厘、オリエント電機を掌中に納めたと思い込んだ関西の財閥岩井は、東京の会社関係者を集めてパーティを催した。柳橋のキレイどころも賑やかな接待ぶり、その中でも一段と小花の芸妓姿が人目を惹く。岩井の野心に溢れた顔、曾我部の仮面をかぶった善人づら。その時、小花の啖呵が満場を制して飛び出した。江戸ッ子芸者の意気をみせて岩井一派のオリエント乗ッ取りを曝露するその啖呵。そこへ卓也も大島介護士と駈けつけた。卓也と大島弁護士の法を以ての攻撃に、遂に岩井一派は崩れた。
夜空に星が美しく輝き、小花と卓也が笑顔を交している。「あたしって、こんな女なんです…」「僕もいうこう男なんだ」星が一つ、幸せそうに勢いよく、ぽーんと夜空へ高く飛んでいった。