1960(昭和35年)/3/22公開 88分 カラー シネマスコープ 映倫番号:11645
配給:東映 製作:東映
山手樹一朗原作を市川右太衛門主演で贈る娯楽時代劇大作。巷に浪人が溢れ、江戸は浪人市場の観深き天保の頃、奸商と結ぶ時の権力に対抗して正義を貫く一群の浪人と、それに協力する町民たちの痛快な活躍をヒューマンタッチで描く。
浪人巷に満ち、江戸は浪人市場の観深き天保の頃―。
南町奉行・矢部駿河守は、奸商佐原屋と結ぶ堀大和守、鳥居甲斐守らの策謀によって失脚。新たに甲斐守が南町奉行の職に就いた。
駿河守の腹心・山川忠介も、自から職を退き、浪人市場に身を投じた一人だつた。忠介は在職中に調べ上げた資料をもとに、新奉行・甲斐守の不正を暴くべく、浪人に身を落して秘かにその時期を待った。
浪人の仲間入りをしたその夜、忠介は女ながら新奉行と佐原屋の関係を探る隠密の美也を、佐原屋の追手から救うが、その追手に雇われていながら忠介の腕に惚れ、用心棒の口をあっさり断った向井作左衛門も同じく浪人者の一人だった。
忠介と美也は、善助という風変りな遊び人に江戸の掃き溜と云われるはだか長屋に連れ込まれる。
善助は佐原屋に内報して小使銭にありつこうという魂胆だったのだ。そしてまた、長屋の他の連中も、二人を取り囲んでゆすろうとするが、日頃悪事の塊りのようなこの長屋の人々も、いささかも動じない忠介の天衣無縫な性格に心酔し、共に新奉行の悪政に対して立ち上るのだった。
一方、美也の兄・瀬戸平五郎も、甲斐守の奸策に反抗して自から与力の職を辞して浪人の仲間入りをした一人だった。折も折、忠介は、江戸城西の丸再建の材木取引きにことよせて、材木商・角屋の内儀・お杉を大和守の用人・黒川が佐原屋と謀って手ごめにしようと狙つていることを知り、単身佐原屋の寮に乗り込んでお杉を救った。
忠介の出現によって、悪事の露見を恐れた大和守一派は、地獄道場と呼ばれる剣客・樫崎一党及び当時江戸一番の殺し屋と云われる人斬り浅こと浅岡伊助を雇って忠介の暗殺を謀る。
深夜の新シ橋上で対決する忠介と伊助だが、月を背に殺気を面上に浮かべて立ちはだかる伊助に対し、忠介は泰然自若、微笑さえ浮かべて、気色ばむ伊助を何時しか説き伏せていた。伊助もまた、はだか長屋の連中と同じように忠介の人格に魅了され、悪政を正す忠介の協力者と変わっていった。
折しも、大和守は再び江戸城西の丸再建に着手し、工事にことよせて巨利を貪ろうと企む。大和守の腹臣・黒川も、再び角屋の内儀・お杉を手に入れようと木材取引にことよせて大和守の邸にお杉を呼び寄せた。
忠介は、お杉に大和守の屋敷に行かせ自からも単身屋敷に乗り込むと、悪事を暴露すべく最後の決戦を挑んだのだ。
一方、時を同じくして、前奉行・矢部駿河守も直参旗本八千石を捨てる覚悟のもとに、忠介の作った調書を持って江戸城に向かっていた。そしてまた、忠介の危機を知った伊助、善助に、はだか長屋の連中、美也とその兄・平五郎ら忠介の協力者たちは、大和守の屋敷を目指し道を急いでいたのだ。
その頃、既に忠介の正義の浪人剣法は、大和守の繰り出す刺客たちの頭上に颯爽と風を切って振り下ろされていた…。