1960(昭和35年)/4/12公開 61分 モノクロ シネマスコープ 映倫番号:11657
配給:東映 製作:東映
伊賀山正光監督が、「拳銃を磨く男」「あの女を探せ」の好評を得て再び贈る「手銭を磨く男」シリーズの第三部。顔が滅茶苦茶に損壊した死体の身元を探るため、唯一の捜査方法である復顔(顔の骨に肉づけして元の人相を割り出す)の苦心をめぐり、これを妨害する麻薬団と麻薬団から仲間割れした被害者に瓜二つの兄の復讐などを織り交ぜたスリルとサスペンスに富んだアクションドラマ。
早朝の埠頭に顔を滅茶苦茶に崩された惨死体が上がった。
早速活動を開始した捜査本部だが、被害者の手掛りは、麻薬中毒患者である意外全くわからない。この難事件に藁をもつかむ思いの捜査陣は、加下刑事が発案した復顔法捜査(顔の骨に肉づけして元の人相を割りだす)に一脈の光明を抱く。
顔の復元は、彫刻家・横田朝文に依頼され、着々と進められた。加下刑事は横田家に出入りするうち、その一人娘・陽子と知り合い、互に好意を寄せ合うようになった。そんなある日、何者かが横田家を襲い、完成寸前に迫った首の像を砕いて暗闇の中に逃げ去った。
唯一の手掛りを失なって失望する加下刑事の手に、陽子が首の像の写真をそっと渡した。
この写真をもとに昼も夜も捜査は続いたが、加下刑事の同僚・井上刑事の報告によってまたも捜査は混乱を呈する。それは、写真と瓜二つの青年・健という男が麻薬団のボス・除永彰の情婦と目されている順子が経営するヌードスタジオにいたという報告であった。殺されたはずの男は生きているのか?
だが死人と瓜二つの健という男は、実は被害者・山西の兄だったのだ。香港の麻薬ボスから日本へと組織網を広げる麻薬団を監視する使命を帯びて日本へ来た健は、弟の復讐を胸に秘め、弟が仲間割れから殺されたと睨んで弟のボスであった除の許へも不気味な出没を見せていた。
健の復讐の目を逃れながらも、健が所持する麻薬を狙う除。悪と悪、互いの胸の底を探ぐる殺気に満ちた駆け引きが両者の間に交わされる
一方加下刑事は、陽子と協力してヌードスタジオを内偵していたが、遇然にもモデルの秋子の凄まじい禁断症状の現場を見て彼女から捜査の糸を掴もうとアパートを訪ねるが、そこで秋子の死体を発見する。
山西の死も秋子の死も同様に麻薬にからむものであり、俄然、除永彰が捜査線上にクローズアップされた。
殺された弟と同じく順子を愛した健は、足を洗おうと順子と共に香港へ逃亡し、再出発を心に決めていた。除永彰がこの二人を捕えて麻薬の隠し場所を聞き出したところへ警官隊が駆けつけたが、除は姿を消してしまった。
そして、麻薬の隠し場所に向かう除の一味とこれを待ち受ける警察との間に烈しい攻防戦が展開。健は、弟の仇・大下との相撃ちで命を落とすのだった。かくて乱戦数刻、除永彰一味はすべて撲滅された。加下刑事は泣き崩れる順子をいたわり、健の死体に合掌する。その加下の顔を東京湾の冷たい風が吹き過ぎてゆく…。
「拳銃を磨く男」シリーズ(4)