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弾丸大将 

Zen, A Brass-Picker

1960(昭和35年)/9/13公開 100分 モノクロ シネマスコープ 映倫番号:11472 
配給:東映 製作:東映

米軍演習地の不発弾や薬莢拾いで生活をする弾拾いたち。そのチャンピオンで、ケチでお人よしの善ちゃんが繰り広げるユーモアとペーソスの弾掘り人生を描く。

弾丸大将 
(C)東映

ストーリー

砲列を敷いた155ミリ砲が一斉に火を噴いた。米軍の実弾射撃演習が雄大な原の天地をどよめかせ、果敢に行われている。その着弾点に得物を狙うような無数の眼が注がれていた。弾拾いたちの目だ。作業服に地下足袋、背中には探索棒を突き差した麻袋、腰には山鉈、アサガキ(小鍬)、トレンチ(折畳式スコップ)、腰袋といった異様な風態は、彼らが弾拾いのために必要欠くべからざる完全武装として考え出したものなのである。
鉄片がカン八十円、不発弾が一発千円という生活の糧を求め、現金の魅力に惹かれて弾拾いに命を張っているのだ。不発の善ちゃんこと高岡善三郎は、この弾拾いの中でも稀代の名手として演習場の原一帯に勇名を馳せていた。一杯の焼酎を稲妻のように飲み干し、むささびのように原っぱを突っ走る善。彼は、生きるためにずるいまでの才能を発揮する向こう意気の強い人間だが、天性のお人好しで愛すべき男でもあった。この善が、ひょんなことからマキという女性に全てを打ち込んでしまった。マキは夫を演習場の爆弾の破片で失った未亡人である。命賭けで堀り出した不発弾を全部マキに捧げてもいい、生命保険の受取人を彼女名義として作りたい、善の頭の中には、オンリーとして可愛いがっていた一杯飲み屋「だるま」のシズ以上にマキの存在が広がっていった。だがマキの心は、同じ弾拾いの但見にあった。彼女は、男たちの中に混って弾拾いに加わり自らの生計を立てるほどの気丈夫な女だ。雄大な原にポッカリと白い雲が浮かび、その下を得意満面の善が行く。今日は、何時もの不発の善ちゃんではない。米軍作業服を来たれっきとした米軍演習場の名誉案内人ゼン・タカオカ・ジョウトウ・パパさんなのである。といっても、それは弾拾いと全く無関係の仕事ではない。弾拾いの収益を上げる一つの手段なのだ。山を案内する事によって、善の麻袋には無条件で薬莢や演習弾がゾクゾクと入り込んできた。それでも飽き足らない善は、米兵の洗濯物のサービスから女の幹旋まで手を延ばすという発展振りだ。そのため善は、商売の繩張りを荒らされたやくざの西寺たちにこっぴどく痛めつけられた。また、弾拾い仲間の茂は、善に激しい反抗を示し不発弾を解体する善の工場にコッソリ白旗を掲げ、その白旗を目標と間違えた米軍は、善の工場を粉砕してしまう。しかし善にはこの商売から手を引く気は毛頭ない。母は養子の口を勧めるが、田圃の二反や三反の水呑み百姓に善は何の魅力も感じなかった。弾丸の下をかいくぐるスリル、仲間を尻目に先頭切って飛び出す優越感、そして現金の魅力、善の全ては原っぱにあるのだ。今日も原っぱに弾拾いたちが命を賭ける。その中にはマキと但見の姿もある。二人は、他目にも似合いの夫婦だ。ところがその夜、但見は不発弾の分解作業中に誤って針管に触れて不幸な爆死をとげてしまった。マキは、生甲斐を失った。霧の夜の原で行き会った米兵ビリーに全てを与えたのも心の寄りどころを求めたからであった。その頃、弾拾いのカナさんが米兵に射殺される事件が起きた。と同時に基地反対運動や米軍撤退運動が各地で持ち上る。弾拾いたちにとってこれは痛し痒しだ。米軍が日本から去ればその日から飯の食いあげだ。
善は、弾拾いを代表して、大いに演習をやってくれるよう米軍にかけ合い、隊長を痛く感激させた。だが運動の如何に関わらず、米軍は近く撤退する予定となっていた。さすがの善もげっそりと肩を落した。更にもう一つ善の心の中に止めを刺すような事件が持っていた。それは、マキがビリーの求愛を受け入れて米国に渡るということである。
マキは、善の制止も聞かず、嫁入り支度を稼ぐための弾拾いに精を出した。だが、マキの夢は無残にも破れた。地中から堀り出した70ミリの不発弾が爆発し、マキは急死する。善は血だらけのマキを抱き上げた。マキの頬に泣き笑いの表情がそのまま固着すると、彼女はがっくりと息絶えた。「マキさんよッ!マキさんよッ!」善の悲痛な絶叫がこだました。
やがて米軍は撤退し、その後には自衛隊が堂々と繰り込んで来た。自衛隊は米軍に劣らず猛烈に撃ちまくり、弾拾いたちを喜ばせたが、彼らの思惑は見事にはずれた。薬莢をチョコレートの包み紙のように考えている米軍とは訳が違う。自衛隊は飛び散る薬莢を昆虫採集のような網で一つ残らず受けているのだ。勿論、弾丸の一発も弾丸拾いたちには与えられなかった。善の腹の虫は収まらなかった。自衛隊の油断を見すました善は、いきなり弾薬箱を引っ担いで走り出した。気付いた自衛隊は、必死に善の後を追う。雄大な原にぽっかりと浮んだ白い雲の下、善はむささびのように素っ飛んで走り続けた…。

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