1960(昭和35年)/9/28公開 73分 カラー シネマスコープ 映倫番号:11915
配給:東映 製作:東映
ゴールデンコンビ梅宮辰夫・三田佳子初のカラー作品。全編の三分の一が水中撮影という大がかりな海底アクションドラマ。海底に秘められた麻薬を巡って、自分の妹を誘拐された若き船員が敢然と悪に挑戦。神秘の海底で壮絶の死闘を展開する。
青く澄んだ海の底では美しい海草の林を縫ってアクアラングをつけた若者たちが戯れていた。若い船員・志摩良平たちである。だが、平穏と思われたこの海で突如事件が突発した。志摩の妹・礼子が行方不明となり、しかも礼子の恋人・青木は何者かにヨットの上で水中銃で殺され、死体となって発見されたのだ。
白昼のヨット殺人事件――捜査が直ちに開始された。志摩は好きな船乗りをやめ、単身、礼子の行方を探す決意を固めた。恋人のリカが勤める“海底クラブ”で支配人の奥田からアクアラングを借り出した志摩は事件のあった海底を探り、岩陰で密輸品と思われる莫大な麻薬の包みを発見する。その時、モーターボートに乗った二人の男が志摩を襲った。麻薬ボス・根本の子分たちである。根本は黒人船員ウィードによって投下された麻薬を海中で回収するという巧妙な手段で麻薬密輸を続けていたのだ。青木を殺害し礼子を誘拐したのもまた彼らだったのである。激闘の末に一味を組み伏せた志摩は、礼子が根本の本拠キャバレー“夜の城”に監禁されていることを知った。単身“夜の城”に乗り込んだ志摩は、礼子と麻薬の交換を迫ったが、用心棒・大津らによって、かえって地下倉庫に閉じ込められてしまう。しかし欲に眩んだ根元の情婦・美根子の助けで危うく虎口を脱した志摩は、黒人船員ウィードの部屋に逃れた。だがウィードもまた密かに志摩の隠した麻薬を狙う一人で、志摩は彼の怪力に屈して気絶してしまった。その時、ウィードの背後に消音拳銃が蛇のように忍び寄っていた。不気味な発射音とともにウィードがのけぞった。影のようなその男は気絶している志摩の手に消音拳銃を握らせると音もなく立ち去っていった。
やがて気づいた志摩は、事の意外さに驚き、傷ついた身を美根子の許へ寄せた。何とか麻薬を志摩と山分けしようとする美根子は、警官の追及から彼をかくまった。
その頃、志摩の船員仲間である手塚が志摩を訪ねた。「俺と組めばどんなやばい仕事も出来るぜ」手塚のこの言葉に何とかして礼子を救い出そうとしていた志摩は協力を頼んだ。手塚は麻薬と礼子を交換するという条件を持って根本一味の許へ使者に立った。意外な事件の紛糾に漸く焦慮の色を見せていた根本はこれに応じた。取引の場所は東雲埋立地。目隠しされた礼子と麻薬の包みを持って両者が歩み寄ると獲物が交換された。素早く礼子の目隠しを取る志摩、だがそれは礼子ではなかった。愕然とする志摩たちに根本一味の激しい銃弾が浴びせられる。しかし騙されたのは根本たちも同じであった。麻薬と思った包みは単なる澱粉に過ぎなかったのだ。翌朝志摩の許へ写真の入った一通の速達が届いた。写真は消音拳銃を手にした志摩が殺されたウィードの横に倒れているものだった。もし麻薬を渡さねば、ウィード殺害の証拠写真として警察に知らせるという脅迫状である。
一方志摩の恋人リカもまた“海底クラブ”の支配人奥田が根本一味である事を知った。奥田こそ殺し屋ジョーと呼ばれるウィード殺害の張本人である。彼はまた麻薬を独り占めにするために、先ずは美根子を、そして根本たちを裏切って用心棒の大津を殺すとボスの根本をも葬ってしまった。礼子の身を案ずる志摩は、遂に奥田の呼び出しに応じて自らアクアラングをつけると麻薬を隠した海底の案内に立った。麻薬は奥田の手に渡ったが彼らはなおも恐るべき完全犯罪を計画していた。志摩のボンベにはあらかじめ僅かの空気しか詰められていなかったのだ。空気の欠乏に苦しみながら、志摩は必死に一味の包囲を破って水面に出ようと焦った。その頃、奥田らによって捕らえられていた手塚、実は麻薬取締官の川島は、かろうじて脱出し、礼子を助けて現場に駈けつけた。リカも警官と到着した。リカは水中スクーターを駆り、海底に潜って志摩のボンベを取り替える。志摩と手塚対奥田一味の壮絶な水中の死闘が展開され、悪の一味はことごとく逮捕された。鏡のような水面をモーターボートが滑る。志摩、リカ、礼子たちの明るい顔が波間を走って遠ざかっていった。