1960(昭和35年)/12/11公開 89分 カラー シネマスコープ 映倫番号:12071
配給:東映 製作:東映
鶴田浩二×美空ひばりのコンビで放つ剣豪時代劇。二人の恋の行方は? 宿命の対決、柳生流対秘法一刀流の結末は?
冬の朝、将軍家狩猟場の駒場野に向かって歩を進める深編笠の浪人者があった。恩師・小野先生暗殺さるの報を聞き、兵法修行の旅から急ぎ帰った神子上源四郎である。源四郎は小野先生亡き後、柳生へ走った小野道場の四天王と遭遇、一瞬のうちに四剣士を斬った。道場を出て後、いかなる至妙の極意を悟ったものか源四郎の剣はそれほど見事な冴えだった。駒場野を去ろうとする源四郎の前に銃を構えて立つ人影があった――意外や若い女・糸耶だ。女にはかまわず源四郎はその場を去る。源四郎は、駒場野のはずれにある古びた屋敷を訪れて食を乞うが、応待に出た娘・美香の仄白い横顔に、自分と同じ孤独の影を見出した。源四郎は食事の後、一瞬の殺気を感じて身を躍らせる。槍先鋭く源四郎を襲ったのは、駒場野で会った女・美香の姉・糸耶だった。江戸に入った源四郎は、老爺を馬蹄にかけながら平然と駆け去ろうとする騎馬の若衆を目撃、怒りにかられてその馬を止める。馬の主は将軍家の姫君・加寿姫だった。生来勝気で男勝りの加寿姫は源四郎に斬りつけるが、松平伊豆守の制止で剣を引いた。伊豆守は孤児の源四郎を育ててくれた恩師だったのだ。その夜、源四郎は伊豆守の屋敷を尋ね、小野先生暗殺の裏に柳生一門と幕府大奥の癌・春日局の力が動いていることを知った。さらに伊豆守は、源四郎に春日局の暗殺を依頼する。この時、源四郎は、天井裏に人の気配を感じ、卍の黒兵衛という稀代の怪盗を捕えた。折から、春日局は大奥の女中を率いて駒場野にうずら狩りを催す。源四郎より一瞬早く、局に向かって何者かが狙撃した。局を狙ったのは糸耶だった。源四郎は、卍の黒兵衛の応援を得て、柳生の警備を斬り開き糸耶を救出する。糸耶にとって春日局は父の仇だったのだ。この後、源四郎は美香が身を隠した愛宕山の青松寺を訪ねるが、小野道場の後を継いだ高垣弥九郎とその輩下の凶刃が待っていた。源四郎に一太刀浴びせられた弥九郎は、小野先生暗殺の下手人は、柳生但馬守であると告げる。さらに、源四郎は善化僧に姿を変えた柳生一門の刺客の襲撃を受けた。このとき、源四郎に向かって、真一文字に斬り込んできたのは加寿姫だった。刃を合わせた源四郎に対して「源四郎逃げるのです…」加寿姫は意外な言葉をささやく。次の一瞬、源四郎と加寿姫は崖下へもんどり打って姿を消した。黒兵衛に救出された源四郎は加寿姫から意外な愛の告白を聞く。加寿姫は男らしい源四郎によって、初めて女の心を取り戻したのだ。だが源四郎は、今はただ師の仇と思い込んだ柳生但馬守を追い、傷ついた身にもかかわらず互角の勝負を挑むが、遂に力尽きて捕えられる。但馬守は小野先生の仇が、風早龍馬という兵法者であると告げた。源四郎は、牢内で原主水というキリシタンと会い、吉原の京紅屋にいるという娘・紅葉太夫に遺品の十字架を託される。その夜、源四郎は黒兵衛の機智によって救出され、吉原の京紅屋へ向かう途中で一人の刺客と会う。源四郎はこの男が風早龍馬と知らず、剣を合わすことを避けて紅葉太夫に会うが、龍馬は源四郎に果たし状を突きつける。龍馬との決闘に向かう源四郎は、またもや柳生一門の剣士と出会い剣を交える。龍馬は源四郎を待ちきれず、京紅屋に乗り込んで紅葉太夫を斬った。一方、源四郎は、柳生の刺客を斬るが、その場へ急を聞いた加寿姫が駆けつける。加寿姫は気の進まぬ縁組を押しつけられ、源四郎に自分を連れて逃げてくれと頼むが、源四郎は身分の違いを説いて聞かせる。この後、源四郎は、松平伊豆守を尋ね春日局の病死を知らされる。この間に風早龍馬は、美香を力ずくで吉原へ売りとばし、あわせて糸耶を人質にして、救出を企てた黒兵衛を斬った。これを知った源四郎は、京紅屋から美香を身請けし、龍馬との決闘の場である駒場野へと向かった。夜明けの木枯らし吹き荒ぶ駒場野…源四郎は、高垣弥九郎ら小野道場の一派を斬り捨て、龍馬と無言のうちに剣を抜き合った。生死を越えた恐ろしい静寂…。一瞬のうちに源四郎は龍馬を斬った。