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花かご道中 

Flowers on The Road

1961(昭和36年)/1/21公開 85分 カラー シネマスコープ 映倫番号:12138 
配給:東映 製作:東映

東千代之介、美空ひばり、丘さとみの花のトリオが幕府の暗殺団を向こうにまわし、勤皇派の連判状を守って東海道五十三次に繰り広げる恋と笑い、剣とスリル満載の明朗時代劇。

花かご道中 
(C)東映

ストーリー

うららかな東海道を疲れた足をひきずり歩いているのは、江戸は浅草、江戸屋弥次郎兵衛の一人娘・お弥重と武蔵屋喜多八の一人娘・お喜久の娘弥次喜多膝栗毛。病弱の父親たちに代わって初の商用五十三次に張り切って出発したものの旅慣れぬ足は遅々として進まず、折角旅連れとなった三太郎と名乗る小粋な旅人さんのこれは見事な倶梨伽羅紋々の刺青に、「サテは前科三犯のやくざ者」と這々の体で逃げ出してきたばかりだった。
ところがその夜、宿の廊下でバッタリ顔を合わしたのがこの旅人さん。「十人ばかり人を斬って逃げて来たやくざ者がいるのよ」と顔色を変えた弥重、お喜久の注進に宿の主はすぐさま宿場役人を呼んだが、突然の御用風に風をくらって逃げ出したのはこの旅人さんの他に、お島、お新の道中師。この二人は、大店の御新造主従に化けて持って生まれた美しさでお弥重、お喜久をファンの一人にしていたのだから、人は見かけによらないといえば、お弥重、お喜久を怖がらせている倶梨伽羅紋々の兄ちゃん・三太郎も、お湯をジャブリとかぶれば純粋無垢のお武家さま。勤王志士の中でもその名も高い長州藩目付役・桜井三四郎の人目を忍ぶ旅姿である。というのは近頃長州、島津藩で倒幕の気運が高まり、両藩の主だった人々の名を連ねた連判状が取り交わされ、その連判状を京に滞在する主君の毛利公に手渡す重責を帯びていたのだ。幕府方もいち早くこの連判状の存在を知り、三四郎の跡を追って刺客団・黒柄組を旅立たせた。そんなこととは露知らぬ、お弥重、お喜久は、「私たちの推理も満更じゃないわね」と意気高らかに天下の瞼・箱根山中へと差しかかったが、馬子の甘言に釣られて山賊の山塞に連れ込まれてしまった。「アレー」と呼べど人っ子一人通らぬ山奥で、あわや二人は…と思われたその時、突然躍り込んだのは三太郎こと桜井三四郎。群がる山賊をちぎっては投げ、投げてはちぎると無事に二人を救い出し、一夜を杣小屋で送ることになった。三四郎が山道の様子を見に行った後、小屋へ飛び込んできたのは江戸飛脚屋・金八と名乗る威勢の良い兄ちゃん。そしてその後から黒柄組の偵察班がのっそり姿を見せたが、またたく間に小屋に戻ってきた三四郎に叩き伏せられてしまった。「今、侍が一人逃げた。間もなく大勢の狼侍がやってくる。私と一緒では、かえって怖い目に逢うぞ、さ、早く行きなさい」――侍口調の三四郎こと三太郎に、身分を知ったお弥重、お喜久は心を残しながら金八の先導で山を下り、浜松の宿にたどりついた。翌日、お島、お新に財布をすり取られた娘・弥次喜多は、賊の跡を追って芝居小屋にとび込むが、ここでも黒柄組の追跡をまいて小屋に身を潜めていた三四郎にめぐり合う。黒柄組の執拗な魔手は芝居小屋にも伸び、三四郎の身に危険の迫った事に気づいたお弥重はとっさの機転で娘芸人になりすますと、三四郎を舞台にひきずり上げて即興の芝居を演じて刺客団の目をくらます事に成功した。「面白かったな、今日は…」「私もう夢中で…。私本当は、お詫びを…」「小田原の宿場か、ハハ、こっちも慌てて逃げ出して…色々な目にあう道中だナ」ここは旅籠の一部屋、みつめ合った二人の瞳はキラキラと燃え切ない想いを語っていた。と折角なロマンチックな雰囲気を叩きつぶす様に、黒柄組の面々がなだれ込んできた。「金太逃げろ!」三四郎の一声に隣室から挟み箱をかかえた飛脚の金八が飛び出してきたが、一瞬早く道中師のお島が挟み箱をさらって韋駄天走りに逃げ出した。それを見つけたのがお弥重にお喜久。「あ、あの女」「お財布の女よ!」女の一年岩をも通す…恋しい三四郎さまに仇する憎い女スリめと鬼女の如きお弥重の形相に、お島は折角盗んだ挟み箱もお財布も全部返して平謝り。三四郎とて同じ事、お弥重の身に万が一の事があってはならないと、剛剣、烈剣ますます冴えて右に左に黒柄組をことごとく斬り伏せてしまった。
東海道の暗雲晴れてそれから数日、毛利公の御前にかしこまっているのは三四郎、お弥重、お喜久、金八の四人。黒柄組が必死になって狙っていた連判状は金八の腹巻の中にしっかりとしまいこまれていた。「この度は、江戸屋弥次郎兵衛の娘・弥重、武蔵屋喜多八の娘・喜久、そちたち両名が道中にて三四郎を助けて力を併せてくれた由、礼を云うぞ」毛利公のおほめの言葉を聞きながら、お弥重の目と三四郎の目はピッタリ合って離れない。「こりゃァ三四郎、どうやらそちたちの戻り旅は楽しそうだな」毛利公の言葉にハッと平伏する三四郎とお弥重。毛利公の云う通り、二人の行くところまさに東海道は花盛りといった事になるのだろう。

花かご道中 
(C)東映
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