1961(昭和36年)/1/26公開 62分 モノクロ シネマスコープ 映倫番号:12100
配給:東映 製作:東映
官庁の守衛が殺され、金庫の金が盗まれた。容疑線上に浮んだ三人の男。しかしアリバイがある…‥お馴染み刑事七人が頭脳をふりしぼり、足を使って暴く計画犯罪の真相。
夜更けの或る官庁。懐中電灯片手に巡回中の守衛の眼が、半開きになっている素材課の窓をとらえた。怪訝そうにドアの鍵をあけて室内に入る守衛。その懐中電灯の光が、簡易金庫の前に散らばる書類を照らし出すと見えた一瞬、背後から人影がおどり出て、守衛の頭に凄まじい勢いで椅子がふり下ろされた。翌朝、瀕死の守衛が発見された。犯行時間は午後九時十三分、手当ての甲斐なく息をひきとった守衛の毀れた腕時計から、時間はそう推定された。荒らされた形跡が歴然たる金庫。だが、係長の岡本は紛糾したものがないという。金庫のダイヤルを知っているのは秋田、根岸という資材課員と、岡本係長だけ。然も、その三人が揃って昨夜残業したとわかると、捜査陣は三人のアリバイ追及にのりだした。三人の話を綜合すると、役所を出たのが七時半、それから三人で一杯やったが話題はもっぱら近々行われる人事異動で、課長に昇進間近い岡本のこと。八時十分、秋田と根岸は、自宅に帰る岡本と別れて、秋田の恋人会計課の志村良子が待つ喫茶店「ファンキー」に来た。秋田は良子との結婚を望んでいたが、秋田に三十万円の借金があると知った良子は、結婚について慎重になっていた。気まずい雰囲気のまま立ち去る秋田。終始、なだめ役に廻っていた根岸は、良子と取り残された。その時、表で「パール座」の最終回を告げるベルが鳴り、根岸は「気分転換」にと良子を寄席に誘った。それが八時五十分。終って出たのが十時半。一方ファンキーを出た秋田は、駅前でパチンコを弾いて、十時過ぎに帰宅したという。
主任を囲んでの打ち合わせの後、六人の刑事は岡本、根岸、秋田のアリバイの裏を取るべく、散っていった。問題がないのは根岸のアリバイだった。役所を訪ねた中川刑事に、志村良子は十時半まで、根岸と共に、パール座にいたことを明言した。岡本が他の二人と別れてから、帰宅したという事は嘘と判明した。岡本には、もと資材課に働いていた町村元子という恋人があり、事件当夜の八時半から十一時まで、元子のアパートに居たらしかった。この線の追求はまだ残ったが、最もあやふやなのは秋田のアリバイ。パチンコ屋にいたという事は、よくアリバイ作りに使われる手とも考えられる。役所附近の商店街に、聞き込みに廻った金子、渡辺の刑事が、役所に出入りしている洋食店の若者から有力な事を聞き出してきた。犯行時間と推定される九時十三分頃、役所附近でタクシーを降りる秋田の姿を目撃したというのだ。秋田は重要参考人として捜査本部に連行された。
秋田を追求の結果、意外な事実が明らかになった。資材課の金庫には業者からのリベートとして届いた、三十万円がはいっていたというのだ。秋田は事件当夜、金庫の金が目的で役所に侵入した事は認めるが、守衛殺しについては、自分が入ったとき、既に血まみれの守衛の姿があったと否認した。志村良子が秋田に面会にきた。だが、自首を勧める良子に、秋田は憤怒の眼ざしをあびせただけだった。秋田の容疑はゆるぎそうにもなかった。一応、安堵の息をもらす捜査本部。そこへ突然、資材課長が訪ねてきた。秋田を弁護する傍ら、根岸の妻が人事異動のワイロとして、三十万円のギフトチェックを贈ってきたという資材課長の言葉に、主任は一抹の不審を抱いた。事件当夜、秋田を役所附近で降ろしたタクシー運転手が、手配の甲斐あって、捜査本部にやってきた。秋田を降ろした直後、別の客をパール座まで乗せたと、何気なく語るタクシー運転手。長田、高津刑事は顔色を変えて、役所に志村良子を訪ねた。混んでいたので、自分だけ座り、根岸は立見席にいたと語る良子。何喰わぬ顔で執務中の根岸は真犯人として逮捕された。良子に映画を見せておいて、役所に忍び込んだ根岸は、目的を果たして、再びパール座に戻っていたのだ。主任以下七人の刑事たちに送られて、捜査本部を出る秋田。その前に、悔恨の想いやみがたい良子の佇む姿があった。だが、秋田は、その良子の前を冷ややかに通りすぎて、街の中に消えていった。
「警視庁物語」シリーズ(24)