1961(昭和36年)/2/14公開 88分 カラー シネマスコープ 映倫番号:12183
配給:東映 製作:東映
商船大学を六年かけて卒業した豪傑船員が、オンボロ船会社に就職、女性群の凄まじいお色気攻勢を突破して、悪ボス達の乗っ取り陰謀に体当たり。鉄拳とユーモアの痛快篇。
瀬戸内海、別府航路の観光船で、天下の快男児・旋風太郎は就職への途上にあった。商船大学を丹念にも六年かけて卒業した太郎の憧れの勤務先は、別府港の西海々運という船会社である。久々に触れる新鮮な潮風を胸いっぱいに吸いこむと浮き浮きとした気持ちをおさえきれずにマスト登りに興ずる太郎。それは甲板を巡ってきた老船長に中断されはしたが、甲板上でゴルフに興ずる令嬢のへっぴり腰を見て、ひょいとヒヤカシの言葉を投げつけたり、酔客に追われる芸者梅香を、持ち前の正義感から助けたり、更にまた太郎に一目ぼれした梅香に、今度は自分が追われるなどと、疾風太郎の行手の波乱を暗示するかの様な、めまぐるしい航海であった。西海々運副社長室に通された太郎は顔をあげたとたん、アッとびっくり。副社長というのは、へぴり腰の令嬢、その傍らにはこれまた終始、令嬢に付き添っていた中年紳士、総務部長の熊谷が控えていた。勝気な加納みどり副社長は、太郎に辛辣な逆襲を喰わせ、売り言葉に買い言葉、ケンケンガクガクの議論の果て、遂に太郎は西海々運を飛び出した。もう一つの船会社、光海運に向かう途中、太郎は西海々運の小山という船員と知り合い、加納社長が病身なのでみどりが副社長として頑張ってはいるが、光海運が土地のヤクザ鬼鮫一家を利用して悪辣な方法で、勢力を発展させていると聞き、再び西海々運の敷居をまたいだ。一風代わった戸山船長のとりなしで、入社がかなった太郎は、朝汐丸というオンボロ貨物船に配属された。戸川船長はじめ、山田、竹さん、譲次、ヘチマ、小山と、愉快なメンバーが気に入った太郎は大いに張り切ったが、仕事は光海運にとられっ放しで、当分出向の見込みもないと聞かされてガッカリ。ともあれ、新入りの歓迎会にとキャバレーに繰り込む一同。変わり者の小山は欠席するが、ナンバーワンのルリ子達に囲まれて席は沸き立った。ほろ酔い機嫌の一行の前に鬼鮫一家が姿を現し、アワヤ激突と見えた時、光海運藤本社長が仲裁に入った。太郎の気風を見込んだ藤本は太郎を料亭に誘い、光海運入りをすすめたが「渇しても盗泉の水を飲まぬ」と太郎は見事な啖呵。その席で再会した梅香が猛烈なウインクを寄せるのを慌てて振り切った太郎は、戸川船長宅に下宿を決めた。戸川は幸子というひとり娘と暮らしており、彼女は小山と恋人同士だった。
熊谷部長はみどりと婚約の間柄でありながら、藤本社長、鬼鮫一家と組んで西海々運の乗っ取りを企てていた。久しぶりに荷主がついて俄かに活気づいてきた西海々運を、何とでもして叩きつぶさんものと鬼鮫一家が朝汐丸の連中に殴り込みをかけ、不意を喰らって太郎も傷ついた。いつしか太郎に心ひかれるようになった幸子は熱心に介抱したが、梅香、ルリ子そしてみどりまでがその枕元におし寄せて看病合戦を展開した。西海々運では不況を挽回する為、資金調達が急務だった。みどりは熊谷と共に上京して通運省に助成金を申請することになった。通運省に日参するみどりに、熊谷は持ち株を担保に銀行の融資を貰う事を進言していたが、太郎は図らずも梅香の情報によって、熊谷の正体を暴いた。助成金の件が思わしくなくみどりはスッカリくさっていたが、太郎には何か策がありそうだ。太郎は通運省政務次官森岡女史に近づき、作戦見事功を奏し、西海々運に助成金を降ろさせた。直ちに、会社へその喜びをもたらせるべくみどりは離京したが、同じ頃、別府へ向けて出航しようとする朝汐丸にはひしひしと危機が迫っていた。執拗な藤本、鬼鮫、熊谷の策略は、恋人幸子を太郎に奪われたと思い込んでいる小山を手先に使って、出航直前の朝汐丸に多数のヤクザを潜入させた。船もろ共に爆破を企てる鬼鮫一家の為に、朝汐丸は風前の灯に置かれたが、迷いの覚めた小山の機転で悪の力をはね返し、太郎一世一代の腕っぷしが、鬼鮫一家を叩きのめした。別府港に無事入港する朝汐丸、幸子とみどりを始め、梅香、るり子の顔を交えた盛大な歓迎に沸き立つ西海々運桟橋、日本晴れの笑顔をみせた太郎は、傍らの車に幸子を乗せると、兇弾に傷ついた小山が収容されている病院目がけて、全速力で疾走してゆくのだった。
「太郎」シリーズ(4)