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二人だけの太陽 

Two People's Private Sun

1961(昭和36年)/2/14公開 71分 モノクロ シネマスコープ 映倫番号:12152 
配給:東映 製作:東映

浅草のチンピラと田舎娘がふとめぐり合い、都会の厳しい現実と戦いながら、ひそやかに愛情を育ててゆく。犯罪ドラマの鬼才、村山新治監督初の青春抒情編。

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ストーリー

浅草のチンピラ、所慎二が、日光の山奥から姉和代を頼って上京して来たばかりの田舎娘、畑村トシの危機を二度までも救ったのは、如何にも土の匂いを感じさせる彼女の無邪気な明るい性格に惹かれた為だった。
一度目は、トシが危うく置引きに荷物を奪われそうになった時、二度目は家で娘を狙う桂組の乾分有村達の毒牙にかけられようとした時である。だが、有村はチンピラの慎二にとって兄貴分に当たる男、当然慎二は裏切り者として有村一味に追われる身となってしまった。事の行きがかり上、今更トシ一人をこの生き馬の眼を抜く都会の真中に放り出して、逃げ出すわけにもゆかず、トシと一緒に慎二はバー“梢”に勤めているトシの姉和代を尋ねることにした。だがやっと探し出した和代は矢部医院の病室で祝福されぬ子を出産したばかり、しかも睡眠薬の自殺未遂で昏睡状態にあった。「女を捨てた無責任な奴」という矢部医師の憤りの言葉も手伝って、若者らしい正義感に燃えた慎二は、産まれた子供の為にも、和代の相手の男を探し出そうと、トシの手を取って矢部医院を飛び出した。バー“梢”のマダムから和代に三人の男がいたことを知った二人は、先ずその一人区役所の厚生課長野村を尋ねた。野村は証拠のない話と、喰い下がる二人のほこ先を巧みにかわし、千円札一枚をトシに握らせるとそそくさと姿をかくしてしまった。
二人目の男は印刷やの枝村、印刷屋とは名ばかりの貧しい店、しかも税務署の執行史が来て差し押さえの真っ最中であった。だがそんな事に同情してはいられない。気の短い慎二は枝村の胸ぐらを?んで問いただした。余りの乱暴にトシは逆に慎二を制する始末、だが、この人の良い気弱な枝村も和代との関係を否定した。慎二は、こんな男が一番臭いと主張したが純朴な田舎育ちのトシには、とてもそんな悪い奴とは思えなかった。
最後に訪ねたのが工員の久留島。二人をバー“梢”の借金取りと勘違いする程気のいい彼は、五ヶ月も和代に会っていないという。折も折ストライキのピケを張る久留島に暴力団が殴り込みをかけるという事態が持ち上がった。暴力団こそ悪い奴、トシはいつの間にか石を拾って暴力団に投げつけていた。慎二とトシは結局三人の男が子供の父親であるという確証を握る事が出来ず、矢部医院に帰ってきた。その頃病院の経営は善良な矢部医師の慈善事業的経営のためすっかり行き詰っていた。ひそかにこれを知った慎二はなんとか和代の入院費だけでも工面しようと、危険を冒して昔のチンピラ仲間勇を訪ねた。かつて慎二達チンピラが一仕事をしたまま、まだ貰っていないタイヤの分け前をせしめようというのだ。だが待ちかまえていたのは有村一味の烈しいリンチ。慎二はトシの機転で漸く一味の虎口を脱する有様だった。しかし向こう見ずな二人の間に芽生えた愛情はいつしか大きく成長していった。
丁度その頃、矢部医師の努力で一時快方に向かっていた和代が、印刷屋の枝村と心中してしまった。子供の父親は生活苦に負けた気の弱い枝村だったのだ。慎二とトシ、二人の懸命の奔走も今は水の泡。「意気地なし!俺達は一体誰のために・・・」慎二の胸に激しい怒りがこみ上げる。トシは愛する姉を失った悲しみに、ただ涙で頬を濡らすだけだった。
交錯するネオンの中に、泥酔した二人は、ジャズ喫茶、安キャバレーと狂ったように踊りまくった。だがその酔いが醒めたとき、二人の心に浮かんだのは、後に残された赤ん坊の事だった。「あの子は孤児院にあずける」矢部医師のこの言葉が針のように慎二の胸に突き刺さった。慎二もかつて孤児院で育ったのだ。「よし!俺達で育てよう」慎二とトシは心に固く誓い合った。若すぎるという矢部医師の忠告も二人の決意を翻すことは出来なかった。晴れ上がった街の空、高々と赤ん坊を抱き上げた慎二とトシが、雑踏の中へ大きく一歩を踏み出していった。

二人だけの太陽 
(C)東映
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