1961(昭和36年)/3/15公開 75分 カラー シネマスコープ 映倫番号:12135
配給:東映 製作:東映
松方弘樹が、はつらつとした青春を、スポーツに生きぬく大学生に扮して熱演する青春痛快篇。物語は、悪徳土建業者に敢然と立向う、アメリカン・フットボールの選手、城南大学のホープ郡司常之進を中心に捲き起る、鉄拳の嵐と恋愛合戦を、東京下町を舞台に描くもの。配役は、主人公の郡司常之進に扮する松方弘樹を囲み、その恋人光子に宮園純子、光子の姉お島に久保菜穂子、アメリカン・フットポールのキャプテン金田熊太郎に木村功、常之進の熱烈なるファンのアプレ芸者金魚に星美智子、お鯉に春丘典子、鮒子に八代万智于、常之進の父常五郎に小川虎之助が・それぞれ扮する他中山昭ニをはじめ加藤嘉、神田隆、花沢徳衛、藤島範文などが顔を揃える豪華メンバーが続いている。尚スリーパブルス、有馬徹とノーチエ・クバーナも出演。
アメリカン・フットボールの選手で、城南大学のホープ。二枚目、そのくせ逞しさもあるという好男児。合資会社 郡司組社長の御曹子。おまけに、生っ粋の江戸っ子と条件が揃えば、世の女性達は、放ってはおくまい。郡司常之進の周囲には、何時も女性ファンがひしめき合っている。中でも、軽食堂「下町」の光子、アプレ芸者の金魚、お鰹、鮒子達は、熱烈なる常之進ファン、なんとか彼のハートを射止めようと、あの手この手と恋愛合戦を展開している。
常之進は、父一人子一人の二人暮しであるが、父の常五郎は、根っからの昔気質土建業者で大の頑固者、常之進が花形として活躍しているアメリカン・フットポールを球ころがしと称し、自分では吉良の仁吉の心意気をこよなく愛す親爺さんである。だがこの常五郎にも、固いところばかりではなく、人知れぬ柔い一面もあるのである。光子の姉で踊りの師匠をしている島子、常五郎親爺はその島子に老いらくの恋を夢みているのだ。妻を亡くした常五郎にとって、島子との逢う瀬はこの世の中での最大の歓喜、だが、それは決して不純なものではなく、誰の目にも微笑ましい風景である。常五郎と島子の間には、息子常之進と妹光子の若い将来の約束までされていた。だが、御当人同志は、そんな事はどこ吹く風、お互いに意地の張り合い喧嘩三昧、寄るとさわると反目し合っていた。
さてここに一つの事件が持ち上った。郡司組は、長年の信用を買われ、丸花建設からダムエ事という大事業を受け負ったが、悪徳土建業者の中浜組は、その仕事を横どりしようと、札束で丸花建設の西堀課長を買収にかかったのである。しかしそれは、計らずもお座敷で買収現場を眼にとめた金魚の注進により、未然に防ぐことが出来たが、中浜組は、それだけでは、引き退っていない。隙あらばと、虎視耽々郡司組失脚を狙っていた。一方、常之進は、アメリカン・フツトボールの甲府遠征資金集めに目下大わらわ。昔気質の父常五郎にはスポーツに理解がなく、取りつくしまもない。万策窮した常之進は、キャプテンの熊太郎と組んで週刊誌のトップ屋というアルバイトのロを見つけ、 ″大都会の黒点″というテーマにより、キャバレーやバーに巣食う愚連隊の生態を探った。常之進と熊太郎は、敢然と愚連隊に立ち向い、危険にさらされながらも取材に奔走した。その最中、常之進は計らずも中浜組が、ファンキーの鉄の先導により愚連隊を使って密輸に手を染めていることを知った。常之進と熊太郎の記事は週刊誌のトップを飾り中浜組の信用はガタ落ちになった。八方破れの中浜組は、殺し屋マンモスの竜をさし向け、常五郎を刺させるという兇行を演じた。その時常之進は、アメリカン・フットボール遠征のため甲府にいたが、お島の電話によって父の危急を知るや、急遽帰京した。幸い常五郎は、生命に別条はなかったが、いきり立った部下の留吉たちは、秘書の山川の制止もきかず中浜組に果し状を突きつけ、決斗場に選んだ晴海埠頭へ出掛けた後だった。このままにしておいたら大変なことになる。常之進は、山川と一緒に話をつけに中浜組へ乗り込んだ。だが、中浜は、骨の髄までの悪人だ。手薄になっている郡司組の工事現場へ乗り込み、ハッパをかけて爆破するというのだ。そして常之進の背後には、マンモスの竜の拳銃がぴたりとつけられた。その一瞬、山川が捨身の体当りを竜にぶちかました。暴発する拳銃、中浜組と常之進、山川の間に血みどろの死斗が繰り広げられた。そこへ、光子の急報によって駈けつけた警官隊がなだれ込み、中浜組は、根こそぎ逮捕された。常之進は、息つくひまもなく光子と共に甲府へ車を飛ばした。アメリカン・フットボールの試合は開始されていた。城南大学は、負傷者続出で苦戦だ。常之進は、光子の声援を背にグランドヘ立った。トライに次ぐトライ。目ざましい常之進の活躍により城南大学は劣勢を挽回し、遂に勝利を握ることが出来た。スタンドは湧いた。光子も勝利の感激に酔った。常之進の蹴上げたボールが、眼にしみるような青空に、大きな孤を描いて飛んでいった。