1961(昭和36年)/5/28公開 81分 モノクロ シネマスコープ 映倫番号:12274
配給:東映 製作:東映
人生の裏街道をゆく拳銃売買のやくざ男が、敢然と悪に対決し、更生の道を拓こうとする一大アクションドラマ。東京暗黒街を二分する、やくざ同志の対立の中に単身乗り込み、腕と度胸で拳銃を売って歩く青年石井康次を中心に、愛憎渦まく人間像を追い、激しいテンポで物語が展開する。配役は、拳銃売買のやくざ石井康次に梅宮辰夫、その恋人の則子に水上竜子がスクリーンデビューするほか藤田佳子が東映現代劇初出演。
石井の頬に冷たい影が走ったと思う瞬間、殺し屋小山の口にくわえた煙草が落ち、その手から拳銃が素っ飛んでいた。ニッコリ笑う石井の右手には、いつの間にか硝煙にけむる拳銃が握られていた。江戸川は神戸から招いた客人がこれ程の腕前とは思わなかった。江戸川は、最近メキメキ売り出してきたやくざ近藤組を、この際拳銃によって一気に壊滅し、縄張りをすべて掌中に収めようと、拳銃ブローカーの石井を呼んだのである。あこぎな江戸川は、石井の持って来た大量の拳銃を騙し取ろうと手下の鈴木とチンピラの新一を、石井の身辺に張り込ませたが役者が一枚上の石井はすべて彼らの裏をかき、逆に法外な値段を吹きかけてきた。そこで江戸川が手下の小山の拳銃に物をいわせようとしては、これも見事な石井の拳銃捌きに手も足も出ないという有様。一見紳士風の石井の何処からこれ程の力が出てくるのだろう。チンピラ新一は、初対面、悪感情を抱いた石井に、次第に傾倒していった。そして紅華飯店に働く新一の唯一人の姉則子もまた、石井の青年紳士らしい風貌に、いつしか好意を寄せ始めていた。則子は、やくざ仲間につき合う新一の素行に頭を痛めていたが、石井が、まさか危ない橋を渡る拳銃ブローカーとは思いも及ばなかったのである。また江戸川の情婦弘子も、石井の水際立った拳銃捌きに魅せられた一人だ。弘子は、父が破産した時、江戸川に家屋敷を騙し取られ力づくで情婦にされ、心から江戸川を憎んでいた。そして弘子とひそかに通じる小山は、時あらばと江戸川の縄張りを狙っているのである。その頃、石井は、江戸川組との商売を諦めて、近藤組に拳銃を売り込んでいた。とその時、何者かが窓越しにライフルを撃ち込んだ。その兇弾を受け、近藤は絶命した。この惨劇を、石井の兇行と信じた近藤組派は、石井を襲った。足に一弾を受けた石井は、飛び込んで来た新一に危ないところを助けられた。しかし誰がライフルを撃ち込んだのだろうか。犯人を目撃したのは新一だけだった。警察は新一を参考人として呼んだが、新一はやくざに仁義を立てて、頑として口を割らない。近藤組の大沢も、親分殺しの犯人を知ろうと新一を追っていた。このままにしていたら新一が危ない。石井は、小山こそ犯人と薄々感づき黒白をつけようと江戸川組に乗り込むが、一瞬の隙に小山に銃床の一撃を見舞われ昏倒した。その石井を助け出したのは弘子である。弘子は、石井の腕を頼り、江戸川に恨みを晴らそうとしたのだ。石井を伴って逃げる弘子に江戸川の拳銃が迫った。弘子の手にも拳銃が。二発の銃声は憎しみ合う男女の命を奪った。その頃、大沢は則子をキャバレー“チュール”に監禁し、彼女を囮に新一を呼び出し、親分殺しの犯人の名を吐かせようとしていた。新一は尚も口を割らなかった。乗り込んできた石井は、手練の拳銃で大沢達を押さえ、則子と新一を救い出した。その時、小山のライフルが不気味な銃口をのぞかせた。石井を狙ってライフルが火を吐く。チュールの店内は銃声に湧いた。近藤殺しの犯人はやはり小山だったのだ。小山は、失神した則子を楯にした。息詰まる一瞬の静寂を破って、石井の拳銃が唸る。小山の身体が絶叫をひいてつんのめった。
どんよりと曇った朝、手錠姿の石井が警官に曳かれてゆく。だが、則子と新一をふり返った石井の顔は更生を誓うかのように明るく輝いていた。