1962(昭和37年)/1/14公開 83分 カラー シネマスコープ 映倫番号:12705
配給:東映 製作:東映
瞼を閉じれば幼いあの日の母の顔…あの胸にもう一度抱かれて泣きたいと旅にさまよう人情やくざ。哀愁にじむ錦之助の母恋い凶状旅。五つの時に別れた母を、探し歩いて二十年。母恋い長脇差を血にぬらし、やっとめぐり合ったその時は…。文壇の巨匠・長谷川伸の万人の胸をとらえた“涙の名作”を中村錦之助の名演で描いた最匠加藤泰監督の股旅慕情の名作。
人気、実力共に絶頂期の中村錦之助が番場の忠太郎に扮し、松方弘樹が金町の半次郎で活躍、その妹に中原ひとみ、忠太郎の母に小暮実千代、忠太郎の妹に大川恵子、その許嫁に河原崎長一郎ほか、夏川静江、山形勲、原健策、徳大寺伸、阿部九州男、沢村貞子らのベテランが絶好な雰囲気を盛り上げている。
忠太郎は、武州金町で弟分・半次郎を思うお袋の愛に触れ、半次郎の代わりに飯岡助五郎一家と対決し、半次郎を常陸に逃がしてやる。幼い頃に別れた母は江戸にいるという風の噂を頼りに忠太郎は、小雪がちらつく年の暮れに母を探して江戸の街を歩き回る。雪の中にうずくまって三味線を弾く老婆を見ては母かと思い、幾分かの金を渡す忠太郎であった。折しも忠太郎を仇と狙う飯岡助五郎一家も江戸の町に入っていて、その飯岡一家に加勢した素盲の金五郎が料理茶屋“水熊”に喰らいつき無心を重ねていた。偶然に忠太郎は金五郎に乱暴された夜鷹を助けたことから、その夜鷹が江州に働いていたことを知って、“水熊”の女将に会いにいく。「もしや江州阪田の郡、番場に六代続いた旅籠おきなが屋忠兵衛をご存知ありませんか。おっ母さん、忠太郎でござんす」「忠太郎さん、親を訪ねるのなら何故堅気になっていないのだえ」と冷たく突き放す実の母。「おッ母さんに逢いたくなったら、こうして上と下の瞼を合わせ、じっと眼をつむります。」ふたたび血の雨を降らして凶状持ちの身を哀しく隠す忠太郎…。